著者
久保 隆一 喜多岡 雅典 赤埴 吉高 待寺 則和 肥田 仁一 田中 晃 進藤 勝久 安富 正幸
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.26, no.10, pp.2488-2493, 1993-10-01
被引用文献数
9

基底膜の構成成分である laminin (LN) の免疫組織化学的染色を大腸癌・胃癌に行ったところ LN 活性が癌組織の基底膜部分に認められる症例に高率に肝転移, 肝転移再発がみられることが明らかになった. また同じ基底膜成分である type IV collagen (CI V) の染色部位は LN と一致し, LN 陽性部位は基底膜であると考えられた. 1987年より LN 染色による大腸癌の肝転移再発の prospective study を行った結果, 高率に肝転移再発が予測できた. 一方, LN 陽性で基底膜を形成する癌がなぜ高率に肝転移するのかを解明するため培養細胞を用いた研究を行った. 培養細胞でも基底膜を形成する癌としない癌があったが, いずれの細胞も LN, CIV を産生していた. 以上より大腸癌・胃癌では基底膜を形成する癌としない癌があり, 基底膜形成癌 (basement membrane producing cancer; BmPC) が高率に肝転移することが明らかになった.