著者
日高 祥信 松元 光春 臂 博美 大迫 誠一郎 西中川 駿
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.161-167, 1998-02-25
被引用文献数
24

遺跡出土骨の同定のための基礎資料を得るために, 現生の鹿児島県産のタヌキ(雄35例, 雌45例)とアナグマ(雄16例, 雌8例)の頭蓋骨, 下顎骨を肉眼的, 計測学的に検索した。肉眼的観察による雌雄差は, アナグマの側頭骨頬骨突起と後頭鱗のみにみられた。頭蓋骨の実測値は, 24の計測部位中タヌキは5部位, アナグマは12部位で, また, 下顎骨は, 11部位中タヌキは9部位, アナグマは10部位でそれぞれ有意な雌雄差がみられた。両種の比較では, 頭蓋骨の長さに関する計測部位と下顎骨の殆どの計測部位でタヌキが有意に大きかった。雌雄判別式の判別効率は, タヌキでは低いがアナグマでは高く, また, 種の判別式の効率は100%であった。最大骨長推定式は, 頭蓋骨では長さ, 下顎骨では長さと高さの計測値から得られた式の決定係数が高かった。これらの結果は, タヌキとアナグマの遺跡出土骨を同定する基礎データになることが示唆された。
著者
西中川 駿 臂 博美 松元 光春 大塚 閏一 中島 哲郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.105-113, 1987-03-16
被引用文献数
1

縄文後期の麦之浦貝塚出土の自然遺物, とくに哺乳類の出土骨を肉眼的ならびに計測学的に調査した.1.自然遺物の総重量は, 72,174.2g(貝類を除く)で, そのうち哺乳類が99%を占めている.2.哺乳類の種や骨の種類を同定できたものは, 3,865個の骨片で, それらはニホンザル, ムササビ, ネズミ, ノウサギ, ツキノワグマ, オオカミ, イヌ, タヌキ, アナグマ, カワウソ, テン, イタチ, アシカ, イノシシ, シカ, カモシカ, ウマ, イルカおよびクジラの7目19種である.これらのうち, 出土骨片数の多いものは, イノシシ(2,414個), シカ(1,310個)で全体の89%を占め, ほかのものはわずか11%である.3.骨の形状は, 各動物ともに現生のものとほとんど差異はなく, また, 骨の大きさは, イノシシ, シカ, タヌキ, アナグマ, ノウサギで, 現生のものより大きい.4.以上の観察から, 麦之浦貝塚を遺した人々は, イノシシ, シカを中心に狩猟していたことが示唆され, また, オオカミ, ツキノワグマ, カワウソなどの出土例は, 動物地理学上貴重な資料となるであろう.