著者
自見 厚郎 堀江 昭夫 八巻 敏雄
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.327-331, 1982-09-01 (Released:2017-04-11)

植物ホルモンの一つである天然オーキシンの主成分は indoleacetic acid (IAA) である. IAAは正常ヒト尿のほか消化管癌組織にも存在し, また動・植物細胞の増殖に関与する (Yamaki et al., 1979). ヒト子宮頸癌由来のHeLa細胞に対するIAAの増殖効果とその拮抗物質PCIB (parachlorophenoxy-iso-butyric acid) の増殖抑制効果をin vitroにおいて検討して, 次の結論がえられた. 1) IAAに増殖効果がみられた. 2) PCIBにIAA, FBS (fetal bovine serum, ウシ胎児血清) に対する拮抗作用がみられた. 3) FBS添加培地の方が細胞増殖作用は優れていた. HeLa細胞はヒト子宮頸癌由来の安定した細胞である. IAAが胃, 食道などの消化管癌などに多く含まれている事実を考え併せると, 癌細胞の増殖にIAAの関与することは想像に難くないと思われる. しかし, 厚い細胞壁を持つ植物細胞と持たない動物細胞に同様の増殖作用がIAAによってみられることから, その構造上の差異に関係しない共通のIAAの作用機序を考える必要がある.