著者
廣畑 富雄 増田 義人 堀江 昭夫 倉恒 匡徳
出版者
The Japanese Cancer Association
雑誌
GANN Japanese Journal of Cancer Research (ISSN:0016450X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.323-330_2, 1973-08-31 (Released:2008-10-23)
参考文献数
12

The carcinogenicity of tar-containing skin drugs, Pityrol, Glyteer, Ichthammol JP. pine tar JP, and Metashal, was investigated by animal experiments and by chemical analysis of carcinogenic aromatic hydrocarbons. The results of animal experiments showed that the proportions of skin papilloma-bearing mice as compared to those at the first appearance of tumor were 64% (Pityrol), 71% (Glyteer), 9% (Ichthammol), 23% (pine tar), and 64% (Metashal). The proportions of skin carcinoma-bearing mice were 36% (Pityrol), 40% (Glyteer), 0% (Ichthammol), 6% (pine tar), and 22% (Metashal). A high proportion (37%) of metastasis in adjacent or remote organs was observed. No tumors developed in the control group that received acetone only.As for chemical analysis, a substantial amount of polycyclic aromatic hydrocarbons and, in particular, of benzo[a]pyrene was identified. The content of benzo[a]-pyrene agreed well with the degree of carcinogenic activity observed by the animal experiment. The average amount of benzo[a]pyrene, from three measurements, were 145 (Pityrol), 129 (Glyteer), none (Ichthammol), 48 (pine tar), and 80μg/10g (Metashal).The carcinogenicity of these drugs in man is difficult to assess at present and further epidemiologic studies appear to be needed to clarify this point.
著者
自見 厚郎 堀江 昭夫 八巻 敏雄
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.327-331, 1982-09-01 (Released:2017-04-11)

植物ホルモンの一つである天然オーキシンの主成分は indoleacetic acid (IAA) である. IAAは正常ヒト尿のほか消化管癌組織にも存在し, また動・植物細胞の増殖に関与する (Yamaki et al., 1979). ヒト子宮頸癌由来のHeLa細胞に対するIAAの増殖効果とその拮抗物質PCIB (parachlorophenoxy-iso-butyric acid) の増殖抑制効果をin vitroにおいて検討して, 次の結論がえられた. 1) IAAに増殖効果がみられた. 2) PCIBにIAA, FBS (fetal bovine serum, ウシ胎児血清) に対する拮抗作用がみられた. 3) FBS添加培地の方が細胞増殖作用は優れていた. HeLa細胞はヒト子宮頸癌由来の安定した細胞である. IAAが胃, 食道などの消化管癌などに多く含まれている事実を考え併せると, 癌細胞の増殖にIAAの関与することは想像に難くないと思われる. しかし, 厚い細胞壁を持つ植物細胞と持たない動物細胞に同様の増殖作用がIAAによってみられることから, その構造上の差異に関係しない共通のIAAの作用機序を考える必要がある.
著者
原武 譲二 堀江 昭夫 李 承道 許 萬夏
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.349-354, 1990-09-01
被引用文献数
2

42歳の韓国人男性に見られた肝fibrolamellar carcinomaの1例を報告する. 患者は痛みを伴わない上腹部腫瘤を主訴として来院し, 肝左葉切除術を受けた. 腫瘍は最大径10cm白色硬であり, 非癌部には肝硬変はみられなかった. 組織学的に腫瘍は, 円形核と好酸性で顆粒状の広い多稜形細胞質を有する腫瘍細胞と層状に配列する線維性間質から成っていた. 癌細胞には, 顕著な核小休や, 散在性のpalebody並びに多数の銅結合蛋白顆粒が認められた. オルセイン染色では, 癌部にも非癌部にもHBsAgを証明し得す, 免疫組織化学的染色では, alpha-fetoproteinは陰性であった. 以上の臨床病理学的所見より, 本例は肝fibrolamellarcarcinomaと診断された. fibrolamellar carcinomaの殆どは白人に発生し東洋人の例は極めて稀である. 本症例の報告並びに文献的考察を行いたい.
著者
堀江 昭夫 石井 惟友 栗田 幸男 田中 教英 細迫 有昌
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.529-540, 1980-12-01

長期間に血栓が多発し, 門脈圧亢進症状を示し, 心不全で死亡した54歳男の剖検症例の報告である. 臨床経過は11年にわたり, 上腸間脈動脈血栓, 食道静脈瘤や牌腫が認められた. 末梢血の全血球成分は平均して多く, 血小板数は通常40万以上であった. 剖検時, 骨髄は細胞成分に富み, 3系統の造血亢進像が認められた. 肝硬変を含め, 肝に線維化像はみられなかった. 門脈に合流する静脈には多発性血栓形成像があり, 新旧の梗塞を示す粗大結節状の牌腫, 食道脈瘤なども認められた. 冠状動脈血栓の器質化にともなう左心室心筋の線維化と心尖部に動脈瘤がみられた. 典型的な血管内凝固症候群では血小板数の減少がみられ, 特発性門脈圧亢進症や非硬変性門脈線維症には肝線維化巣が認められることによって, 本症と鑑別される. 本症は臨床検査所見ならびに剖検所見を. 綜合してhemopoietic dysplasiaの範疇に入ると考えられる.(1980年8月6日受付)