著者
自見 英治郎
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州歯科学会雑誌 (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5.6, pp.199-209, 2005-12-25 (Released:2017-12-20)
参考文献数
39
被引用文献数
1

破骨細胞は骨吸収を司る多核巨細胞であり,骨吸収因子によって骨芽細胞/骨髄ストローマ細胞の細胞膜表面に誘導されるRANKLと破骨細胞前駆細胞が発現するRANKとの細胞間接触を介して誘導される.さらに遺伝子ターゲティングの結果から,RANKL, RANKが破骨細胞分化に必須の因子であることが証明された.以前から,局所に浸潤するT細胞やリンパ球やこれらの細胞から産生されるサイトカインなどが,骨破壊に関与することが知られていたが,近年,免疫系細胞による骨代謝調節機構を解明する研究として「骨免疫学」が提唱され,発展している.例えば,RANKLは,カルシウム依存性のカルシニューリンを介して特異的にかつ持続的にT細胞の活性化に重要な役割を担う転写因子,NFATc1を活性化する.NFATc1を欠損したES細胞から破骨細胞は誘導されず,またNFATc1遺伝子を破骨細胞前駆細胞に強制発現させるとRANKL刺激なしに破骨細胞を誘導できることから,NFATc1は破骨細胞のマスター分子と考えられる.骨代謝と免疫応答を結び付けるもうひとつの因子はNF-κBである.NF-κBのp50,p52二重欠損マウスは大理石骨病を呈し,IKKα,やNIK欠損マウスでも破骨細胞形成の抑制が認められる.さらにNF-κBの活性化経路を選択的に阻害するNBDペプチドは破骨細胞形成を抑制する.NF-κBが破骨細胞分化に必須の因子であることは広く受け入れられているが,NF-κBの標的遺伝子を同定し,NF-κBによる破骨細胞分化の分子メカニズムを解明することが重要である.
著者
宇田川 信之 高見 正道 自見 英治郎 伊藤 雅波 小林 幹一郎 須沢 徹夫 片桐 岳信 新木 敏正 高橋 直之
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.64-69, 2001-03-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
10

破骨細胞は高度に石灰化した骨組織を破壊・吸収する唯一の細胞である.骨吸収を司る多核の破骨細胞はマクロファージ系の前駆細胞より分化する.この破骨細胞の分化と機能は, 骨形成を司る骨芽細胞あるいは骨髄細胞由来のストローマ細胞により厳格に調節されている.大理石骨病を呈するop/opマウスの解析より, 骨芽細胞が産生するマクロファージコロニー刺激因子 (M-CSF) が破骨細胞前駆細胞の分化に必須な因子であることが示された.更に最近, 骨芽細胞が発現し破骨細胞の分化と機能を調節する腫瘍壊死因子 (TNF) ファミリーに属する破骨細胞分化因子 (osteoclast differentiation factor, ODF/receptor activator of NF-κB ligand, RANKL) がクローニングされ, 骨芽細胞による骨吸収の調節メカニズムのほぼ全容が解明された.骨吸収の調節は, Ca代謝調節ホルモンと共に局所で産生される各種のサイトカインが重要な役割を担っている.骨吸収促進因子は骨芽細胞あるいは間質細胞に作用してRANKLの発現を促進する.しかし, TNFαやIL-1は破骨細胞前駆細胞や破骨細胞に直接作用し, RANKLのシグナルを介さずに破骨細胞の分化や骨吸収機能を促進することも明らかにされた.さらに, 骨形成因子 (BMP) をはじめとするTGF-βスーパーファミリーに属するサイトカインがRANKLの存在下で破骨細胞の分化と機能を促進する結果も得られた.現在, これらのサイトカインとRANKLとのシグナル伝達のクロストークに関する解析が活発に行われている.