著者
臼井 正彦 薄井 紀夫 坂井 潤一
出版者
東京医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

ヒトぶどう膜炎におけるEpstein-Barr virus(EBV)の病因的関与を検討する目的で、原因不明のぶどう膜炎患者より得られた種々の検体を用いてEBV特異的抗体価の測定およびPolymerase chain reaction(PCR)法によるEBVゲノムの検索を行った。結果として、1)HLA-B27と強い相関を示すとされている急性前部ぶどう膜炎患者の中にEBV特異的抗体価の異常(VCA IgM抗体陽性)を示す症例を認めた。これらの症例はすべてHLA-B27陰性であり、新しい概念に属する一つの疾患単位として考えられた。2)ある種の網膜色素上皮症においてEBV特異的抗体価の異常高値および血中EBV感染リンパ球の増加を認め、EBVとの関連が示唆された。3)原田病患者の髄液から高率にEBV DNA並びにEBV特異的抗体を認めた。原田病の疾患感受性を規定しているHLA-DR抗原中のT細胞認識部位である第3超可変領域とEBV複製の際に感染細胞の核と細胞質に存在するnucleocapsidglycoproteinであるgp110との間に相同性の高いアミノ酸配列が存在することを文献的に見い出し、このアミノ酸配列を含む合成ペプチドに対する反応性(proliferation法)が原田病急性期患者のリンパ球において上昇していることを認めた。またこのことは、特に原田病患者においてEBVがなんらかの関連を有していることを示すものである。以上の結果から、ぶどう膜炎におけるEBV関与の可能性が示された。さらに上記疾患の発症機序解明にむけてのひとつのステップとして、正常眼内組織(死体眼)におけるEBVレセプター(EBVR)の発現の有無および部位についてEBVRを認識するモノクローナル抗体(OKB7)を用いて免疫組織学的染色ならびにウエスタンブロッティング法による解析を行った。その結果、網膜色素上皮及び毛様体の一部において、EBVRの発現が確認された。これにより、EBVが直接眼内に感染性を有する可能性が示された。