著者
臼田 謙太郎 西 大輔 松岡 豊
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.849-855, 2014-09-01 (Released:2017-08-01)

妊娠うつ病はおよそ10%の有病率があるとされ,決してまれな疾患ではない.しかし妊婦の多くは,薬物治療を希望しないため,より安全性が担保されている非薬物療法の開発の必要性は高いと考えられる.そしてうつ病の補完代替療法の中でもこれまでに最もエビデンスが蓄積されてきたものの一つにω3系脂肪酸がある.本稿ではω3系脂肪酸とうつ病に関する疫学研究の知見,ランダム化比較試験とそのメタ解析の結果,妊娠うつ病に対するω3系脂肪酸のこれまでのエビデンスをまとめた.ω3系脂肪酸は魚に多く含まれ,日常の食生活の影響を多く受ける可能性があり,今後はわが国での実証的な研究が望まれる.
著者
臼田 謙太郎 西 大輔 佐野 養 松岡 豊
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.147-155, 2016-04-15 (Released:2019-03-19)
参考文献数
34

産後うつ病の予測因子については,国によって異なった要因が報告されており,社会文化的な相違がその原因になっている可能性がある。日本においては,子どもを産まなければならないというプレッシャーを感じることが産後の抑うつ症状を予測する可能性があると先行研究から考えられたため,本研究ではその仮説を検討した。市中産院で妊娠12〜24週の妊婦を連続サンプリングでリクルートし,妊娠中と産後1カ月時点でエジンバラ産後抑うつ質問票(EPDS)を実施し,産後のEPDSが9点以上であることを従属変数としてロジスティック回帰分析を行った。産後1カ月の調査には118名(66.7%)が参加し,解析の結果,出産に関するプレッシャーが産後の抑うつ症状を予測していた。総合病院の精神科において妊婦中に出産に関するプレッシャーの有無を尋ねることは,産後の精神的健康を予測するうえで有用な可能性が示唆された。