- 著者
-
舛屋 圭一
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.148, no.6, pp.322-328, 2016 (Released:2016-12-01)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
-
3
現在,臨床現場で使用されている薬剤は主に低分子と抗体医薬品であり,ペプチド医薬品(古典的ペプチド医薬品)はインスリンやリュープロレリンなど極めて限られた数の薬剤しか使用されていない.その理由は,主に古典的ペプチド医薬品には弱点が多く,創薬研究のツールとしては有用なものの,創薬研究開発の最前線では敬遠されてきた歴史がある.しかし,昨今の低分子医薬品創製の行き詰まり感と抗体医薬品におけるターゲット枯渇や経済合理性の問題を背景に,中分子医薬品として特殊環状ペプチドが脚光を浴び始めている.その主な理由は,①ペプチド一つ一つを化学合成しなくても生物学的評価を行えるシステム(in vitro selection)が確立された,②非天然型のアミノ酸を組み込んだ〝特殊ペプチド〟が容易に調製でき,低分子・抗体医薬品の長所を併せ持たせることが可能となった,からである.本稿では,特殊環状ペプチドがどのように創薬研究開発全体に貢献できるかを論じる.