著者
林 伸和 小島 愛 内方 由美子 舛永 安繁 中村 圭吾
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.564-573, 2017 (Released:2018-08-17)
参考文献数
9

尋常性痤瘡患者に対する過酸化ベンゾイルゲル(ベピオ(R)ゲル 2.5 %,以下,本剤)の日常診療下における安全性及び有効性について,本剤使用3ヵ月後までの中間集計結果をもとに検討した. 解析対象症例378例中57例(15.1%)に副作用を認めたが,重篤なものはなかった.適用部位の皮膚刺激症状(紅斑,刺激感,乾燥,瘙痒感,皮膚剥脱,疼痛)のほとんどは本剤使用開始後1ヵ月以内に発現していた.皮膚刺激症状の発現率について,性別,年齢,尋常性痤瘡の重症度による一定の傾向はなかったが,敏感肌では有意に高かった.接触皮膚炎は5例(1.3%)に認められ,その発現時期は本剤使用開始後5〜20日であった. 全顔の皮疹数の減少率(中央値)は,本剤使用3ヵ月後において,炎症性皮疹が75.0%,非炎症性皮疹が61.3%,総皮疹が67.7%であった.12歳未満の小児患者においても良好な結果が得られ,特に炎症性皮疹数は12歳以上と比較して有意に高い減少率であった.全般改善度で「著明改善」または「改善」と判定された症例は、顔面で377例中271例(73.4%),顔面以外で32例中18例(58.1%)であった.Skindex-16日本語版を用いたquality of life評価では、症状,感情,機能および総合スコアの全てが本剤使用3ヵ月後に改善していた. 以上より,本剤は尋常性痤瘡の急性炎症期における有用な治療選択肢の一つであり,小児患者に対しても有用な薬剤となり得ることが示唆された.