著者
林 伸和 森 直子 内方 由美子 是松 健太 可児 毅 松井 慶太
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.434-444, 2021 (Released:2021-07-03)
参考文献数
9

過酸化ベンゾイルゲル(ベピオ®ゲル 2.5 %,以下,本剤)は,2014年12月に尋常性痤瘡を効能として承認された,抗菌作用および角層剥離作用を有する薬剤である.2015年7月より本剤の日常診療下における尋常性痤瘡に対する特定使用成績調査を実施し,観察期間12ヵ月間での安全性および有効性について検討した. 安全性解析対象症例の15.2%(169/1109例)に副作用が認められた.重篤な副作用として適用部位紅斑が1例認められたが,それ以外は非重篤であった.副作用発現症例169例すべてに,医薬品リスク管理計画で「重要な特定されたリスク」とされている皮膚刺激症状がみられており,そのうち119例は本剤使用1ヵ月以内に発現していた.女性や乾燥肌,敏感肌の症例等で皮膚刺激症状の発現頻度が高い傾向がみられたが,特に本剤の使用を回避すべき患者層はなかった. 全顔の皮疹数の減少率(中央値)は,12ヵ月後までの最終評価時において,炎症性皮疹が80.0%,非炎症性皮疹が66.7%,総皮疹が73.9%であった.また,最終評価時の全般改善度「著明改善」または「改善」と判定された症例は,顔面で71.4%(788/1103例),顔面以外で64.1%(59/92例)であった.Skindex-16日本語版を用いたquality of life評価において,症状,感情,機能および総合スコアの全てが本剤使用開始時と比べて3ヵ月後に有意に減少しており,本剤使用12ヵ月後においても減少状態が維持されていた. 以上より,本剤は実臨床において,急性炎症期だけでなく長期使用した場合にも有用な薬剤であることが示された。
著者
林 伸和 小島 愛 内方 由美子 舛永 安繁 中村 圭吾
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.564-573, 2017 (Released:2018-08-17)
参考文献数
9

尋常性痤瘡患者に対する過酸化ベンゾイルゲル(ベピオ(R)ゲル 2.5 %,以下,本剤)の日常診療下における安全性及び有効性について,本剤使用3ヵ月後までの中間集計結果をもとに検討した. 解析対象症例378例中57例(15.1%)に副作用を認めたが,重篤なものはなかった.適用部位の皮膚刺激症状(紅斑,刺激感,乾燥,瘙痒感,皮膚剥脱,疼痛)のほとんどは本剤使用開始後1ヵ月以内に発現していた.皮膚刺激症状の発現率について,性別,年齢,尋常性痤瘡の重症度による一定の傾向はなかったが,敏感肌では有意に高かった.接触皮膚炎は5例(1.3%)に認められ,その発現時期は本剤使用開始後5〜20日であった. 全顔の皮疹数の減少率(中央値)は,本剤使用3ヵ月後において,炎症性皮疹が75.0%,非炎症性皮疹が61.3%,総皮疹が67.7%であった.12歳未満の小児患者においても良好な結果が得られ,特に炎症性皮疹数は12歳以上と比較して有意に高い減少率であった.全般改善度で「著明改善」または「改善」と判定された症例は、顔面で377例中271例(73.4%),顔面以外で32例中18例(58.1%)であった.Skindex-16日本語版を用いたquality of life評価では、症状,感情,機能および総合スコアの全てが本剤使用3ヵ月後に改善していた. 以上より,本剤は尋常性痤瘡の急性炎症期における有用な治療選択肢の一つであり,小児患者に対しても有用な薬剤となり得ることが示唆された.