著者
舩橋 惠子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10-2, pp.55-70, 1998-07-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
20
被引用文献数
1

育児休業は、常にジェンダー変革的とは限らない。制度は両性に開かれていても、実際に取得するのは母親が多い。女性ばかりが取得する結果、労働市場における男女不平等が再生産される。では、いかなる条件の下で、育児休業政策はジェンダー革新的になるのだろうか。本稿では、EUおよび北欧諸国 (スウェーデン、デンマーク、ノルウェー) の経験に注目しながら、男性の子育てを促進するジェンダー自覚的な育児休業のあり方を探る。ヨーロッパの経験からは、1) 「男性稼ぎ手モデル」から「平等シェアモデル」へ、2) 「家族単位」の制度から「他者 (移譲できない個人の権利」としての制度へ、という二つの基本的な政策動向が見いだされた。北欧の経験によれば、ジェンダー変革的な育児休業制度の条件は、1) 最低6ヶ月を越える充分な期間の長さ、2) 給与に連動した高水準の給付、3) 柔軟性、4) 割当制、の4つである、、さらに、企業文化の革新、父親役割の変革、ケアラーとしての父親 (対する社会的支援などが重要であることもわかった。このような父親の育児を推進する政策に加えて、男性保育者増強政策も必要である。育児は、男女の間でも、家族と国家との間でも、分かち合いうるのである。
著者
舩橋 惠子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.209-218, 2011-10-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
28

本稿の目的は,フランスの家族政策が家族変動にどのように対応しているかを示すことである.はじめに,増加する同棲,別居パートナー,婚姻に代わろうとしているパックス,離婚とひとり親,ステップファミリーといった,今日的パートナーシップ現象を概観する.これらは,家庭や職場における女性の権利と,生殖に関する権利を尊重することと並行していた.次に,働く親を支えるために1980年代から革新してきたフランスの家族政策の概要(子どもの教育・保育システム,労働時間の短縮,十分な余暇,膨大な家族手当など)について描き出す.フランスの経験は,家族変動の時代にあっては家族の絆(きずな)を社会的に支えることが,われわれの社会を持続可能な状態に保つということを教えている.