- 著者
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船迫 真人
上江洲 朝洋
岡本 幸春
阪上 良行
谷本 幸三
大田 喜一郎
大畑 雅洋
藤田 拓男
- 出版者
- The Japan Geriatrics Society
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.4, pp.347-354, 1978
- 被引用文献数
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最近遊離基と老化に関する問題が注目を集め, 遊離基の作用の結果生じる過酸化脂質 (以下Pxと略す) と組織及び細胞の老化に関する報告も増加の傾向にある. 私共は入院患者398名及び集団検診被検者75名の空腹時血清を使用して血清Pxを測定し, 加齢及び各脂質分画との関係を検討した. 又集団検診被検者については血清PxをTBA反応比色法 (以下比色法と略す) 及びTBA反応蛍光法 (以下蛍光法と略す) で測定し, 両法の比較も若干行った. まず入院患者を対象に血清Pxを比色法により測定するとm±SD=13.08±2.45nmole/ml, これを平均年齢のほぼ同じ集団検診被検者ではm±SD=11.3±1.98nmole/mlで何らかの疾患を有する入院患者の方が高値を示した. 又症例数の増加と共に正規分布に近い分布状態を示した.<br>血清Px値と年齢の関係は70歳までは加齢と共に血清Px値は増加の傾向を示し, 70歳より高齢で逆に低下の傾向を示した. 特に70歳以下の集団検診被検者に於ける蛍光法によるPx値と年齢の間では有意の正の相関がみられた. 入院患患では胃癌・心筋硬塞・心不全・気管支喘息等種々の疾患に於いて比色法によるPx値が高値を示し, ことに比較的重症な症例では高頻度であつた.<br>次に各脂質分画とPx値の関係について検討すると入院患者ではNEFA・βリポ蛋白・βリポ蛋白分画とPx値は有意正の相関を示した. 又集団検診被検者に於ては蛍光法によるPx値はβリポ蛋白と正の相関を認めた.<br>血中 Vitamin E (以下VEと略す) とPx値との間には有意の相関を認めなかったが, このことは血清中ににはVE以外にも抗酸化作用を有する物質が存在することを示唆した.<br>血清での比色法によるPx値と蛍光法よにるPx値の間に有意の相関を認めず, 比色法によるPx値の方が約10倍の値を示したが, 比色法ではシアル酸等Px以外の物質を非特異的に測定している可能性が多い.