著者
成瀬 信子 小川 安朗 藤田 拓男 折茂 肇 大畑 雅洋 岡野 一年 吉川 政己
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.5, no.6, pp.487-490, 1968-11-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
10

2才から91才にいたる81人の健康男子の毛髪を5才ごとに区切り, 各群5人を選び, 1人5本の試料について, 洗浄後, 蒸留水で十分湿潤し, テンシロンIII型万能引張り試験器で切断荷重, 切断伸長率, 切断仕事量および立ち上りのヤング率を測定した. 毛髪の直径は60~140μの間に分布し, 15才前後をピークとして, 以後加齢とともに漸減の傾向を示し, 二次曲線, または, 15才ごろまでは上昇以後下降する2本の直線の合成として表現される. 年齢と切断荷重, 年齢と切断仕事量の推移もほぼ同様である. これに反し, ヤング率は, 20才ごろまでは減少し, 以後加齢とともに徐々に上昇する二次曲線への回帰が統計的に有意である. 加齢の指標の一つとして, 毛髪の物理的性状の研究は有用である.
著者
船迫 真人 上江洲 朝洋 岡本 幸春 阪上 良行 谷本 幸三 大田 喜一郎 大畑 雅洋 藤田 拓男
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.347-354, 1978
被引用文献数
2

最近遊離基と老化に関する問題が注目を集め, 遊離基の作用の結果生じる過酸化脂質 (以下Pxと略す) と組織及び細胞の老化に関する報告も増加の傾向にある. 私共は入院患者398名及び集団検診被検者75名の空腹時血清を使用して血清Pxを測定し, 加齢及び各脂質分画との関係を検討した. 又集団検診被検者については血清PxをTBA反応比色法 (以下比色法と略す) 及びTBA反応蛍光法 (以下蛍光法と略す) で測定し, 両法の比較も若干行った. まず入院患者を対象に血清Pxを比色法により測定するとm±SD=13.08±2.45nmole/ml, これを平均年齢のほぼ同じ集団検診被検者ではm±SD=11.3±1.98nmole/mlで何らかの疾患を有する入院患者の方が高値を示した. 又症例数の増加と共に正規分布に近い分布状態を示した.<br>血清Px値と年齢の関係は70歳までは加齢と共に血清Px値は増加の傾向を示し, 70歳より高齢で逆に低下の傾向を示した. 特に70歳以下の集団検診被検者に於ける蛍光法によるPx値と年齢の間では有意の正の相関がみられた. 入院患患では胃癌・心筋硬塞・心不全・気管支喘息等種々の疾患に於いて比色法によるPx値が高値を示し, ことに比較的重症な症例では高頻度であつた.<br>次に各脂質分画とPx値の関係について検討すると入院患者ではNEFA・βリポ蛋白・βリポ蛋白分画とPx値は有意正の相関を示した. 又集団検診被検者に於ては蛍光法によるPx値はβリポ蛋白と正の相関を認めた.<br>血中 Vitamin E (以下VEと略す) とPx値との間には有意の相関を認めなかったが, このことは血清中ににはVE以外にも抗酸化作用を有する物質が存在することを示唆した.<br>血清での比色法によるPx値と蛍光法よにるPx値の間に有意の相関を認めず, 比色法によるPx値の方が約10倍の値を示したが, 比色法ではシアル酸等Px以外の物質を非特異的に測定している可能性が多い.