著者
花屋 馨 男沢 和郎 村松 隆
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1643-1649, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1

cis-2-置換5,8-ジメチル-4-クロマノール誘導体の立体配座を検討する目的で,それらの赤外部におけるOH伸縮振動スペクトル(YOH)を四塩化炭素の希薄溶液で測定した。2-位の置換基として,メチル基〔6〕およびフェニル基〔7〕~ 〔10〕を有する場合には,3623~3625と3596~3599cm-1に2本の吸収を示し,エトキシカルボニル基〔11〕を有する場合には,3608と3595cm-1に2本の吸収を示した。〔7〕~〔10〕では,フェニル基に電子供与基を導入してもYOHにあまり変化が認められなかった。これらの結果から,〔6〕~〔10〕では2-位の置換基がエクアトリアル,4-位のヒドロキシル基が擬エクアトリアルであるジエクアトリアル配座が優位立体配座であり,一方,〔11〕はジアキシアル配座が優位立体配座であろうと考察した。これらの結果は1H-NMRスペクトルに基づく検討結果からも支持されることがわかった。
著者
花屋 馨
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.82-85, 1970-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
4

2-シクロヘキセン-1-オール誘導体の立体化学を検討する目的で, 5-メチル-2-シクロヘキセン-1-オン, 5-フェニル-2-シクロヘキセン-1-オンの Meerwein-Ponndorf 還元およびそれぞれの cis, trans-アルコールについてOppenauer-Meerwein-Ponndorf 平衡異性化を行なった。Meerwein-Ponndorf還元では,アセトンを留去しながら反応させたときはシス体をトランス体よりも多く生成したが,アセトンを留去することなく長時間還流したときはトランス体を多く生成した。また,5-メチル-および5-フェニル-2-シクロヘキセン-1-オールのシス体あるいはシス, トランス体の混合物についてOppenauer-Meer-wdn-Ponndorf 平衡異性化を行なった結果, いずれの場合もトランス体を多く生成した。これらの結果から, 5-位に置換基を有する2-シクロヘキセン-1-オール誘導体で1-位の水酸基は擬エクァトリアルよりも擬アキシアル配座が安定系であり, これは1-位の水酸基と2-位の水素原子との相互作用つまり“allylicstrain”に起因するものと考えた。