著者
古谷 宏一 横田 弘 橋本 勝文 花田 祥一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_159-I_168, 2011 (Released:2012-03-30)
参考文献数
6

社会基盤施設の維持管理において,事後保全型から予防保全型へとその枠組みを転換することにより,施設の有効活用やライフサイクルコストの低減を図る試みが進められている.この場合,劣化進行予測の信頼性を向上させることが重要になる.本論文では,係留施設の劣化に対する対策の実施推奨年をマルコフ連鎖モデルにより予測する場合の,予測結果の信頼性を議論する.つまり,係留施設の劣化度調査データを用いて次の検討を行う.1) 構造物ごとの劣化速度を算出し,K.S.検定により劣化速度の分布系を決定する.また,2) 分布に従う劣化速度乱数を発生させ,モンテカルロシミュレーションにより構造物の対策推奨年の分布を求める.さらに,3) 施設全体の代表劣化度の相違が対策推奨年の予測結果に与える影響を把握する.その結果,1) 係留施設の構造形式ごとに推定される対策推奨年の分布系が確認できた.2) 構造物に期待される対策推奨年の最頻値と最小値との差を定量的に示すことができた.また,3) 代表劣化度の相違に起因する対策推奨年の予測結果の差異を定量化する算定式を提案した.