著者
花見 健太郎 田中 良哉
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

神経系及び神経伝達物質が免疫系のみならず、骨代謝へも影響を与えている事が近年報告されている。我々は、関節リウマチ患者炎症性滑膜の樹状細胞にドパミンが豊富に存在する事、ドパミンD1様受容体阻害薬が滑膜炎症及び関節破壊を抑制しうる事をSCIDマウスを使ったヒト関節リウマチモデルにおける検討で明らかにし、更にはドパミンD2受容体シグナルが細胞内cAMP-c-Fos-NFATc1を抑制する事で 破骨細胞形成を抑制する事を報告しており、神経伝達物質が、関節リウマチの新規治療方法となり得る可能性が考えられる。本研究では、神経伝達物質による関節リ ウマチに対しての新規治療法の開発を目的とする。
著者
花見 健太郎
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本年度はStat6欠損マウスを用いて樹状細胞(DC)の分化と抗原提示細胞としての機能解析を行った。まず、DC分化にてついてはマウス骨髄を用いたin vitroにおける分化とマウスの脾臓内のDCサブセット解析によるin vivoの分化について解析を行った。何れの評価系においても野生型とStat6欠損DCの間に違いを認めず、同程度のCD11c陽性樹状細胞を認めた。また、脾臓内のconventional DCとplasmacytoid DCの2つの異なるDCサブセットの全体に占める割合及び、これらDCのLPS刺激による発現レベルは野生型とStat6欠損DCの間に違いを認めなかった。抗原貪食能をFITC標識アルブミンの取り込み能にて評価を行ったが細胞内に取り込まれたアルブミン量に差は見られなかった。各々のサイトカイン産生能はLPSにて24時間刺激しIL-10、IL-6、TNF-αにつき評価を行った。Jak3欠損樹状細胞と同様Stat6欠損樹状細胞では過剰なIL-10の産生が見られた。これらの結果は関節リウマチに対する臨床試験において経口内服薬として類を見ない効果を見せているJak3特異的阻害剤の作用機序を示唆するものと考えられる。まず、in vivoとin vitroにおいてStat6はJak3同様DCの分化や抗原取り込み能には関与しないためJak3阻害剤はDCの自然免疫における基盤となる機能に影響は与えない。しかし、一方サイトカイン産生においてはIL-10の産生がやはりJak3欠損樹状細胞同様、野生型と比して亢進していた。以上より、Jak3阻害剤の抗炎症作用は樹状細胞からのIL-10産生を促すことによることが明らかとなり、Jak3-Stat6シグナル伝達経路がIL-10の産生を負に制御していることが明らかとなり関節リウマチ病態の理解と新規治療の開拓に大きな意義があると考える。