著者
若杉 亮 和泉 潔 平野 正徳
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回全国大会(2021)
巻号頁・発行日
pp.2I3GS5b04, 2021 (Released:2021-06-14)

電力の自由化に伴い,工場などの大口の電力需要を持つ事業者は,電力調達の際に市場価格や需給の変動など不確定要素を新たに考慮する必要が出てきた.本研究では,価格高騰時のコスト削減や需給調節などのために需要側がとりうる手段の1つであるデマンドレスポンス(DR)について,電力市場におけるその効果を分析した.具体的にはまず,標準的な工場の用途別電力消費量時系列データから,主成分分析により特性を抽出し,これを基に工場の用途別電力消費モデルを構築した.次に,この工場エージェントに加え電力供給エージェントと需要エージェントが参加する,JEPX(日本卸電力取引市場)の1日前市場を模したマルチエージェントモデルを用いて,シミュレーション実験を行った.実験では,工場のDRシナリオについてそれぞれ市場に対するスケールを変化させ,費用対効果の観点で2つの評価指標によってDRの効果を分析した.実験結果から,工場規模が大きいほど,自身のマーケットインパクトによりDR効果は大きくなることが確認できた.一方で工場やDR規模の大小によらずDR効果がばらつくことがあり,DR効果の要因が複合的である可能性が示唆された.