著者
小泉 令三 若杉 大輔
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.546-557, 2006-12-30
被引用文献数
1

多動傾向のある小学2年生男児Aの立ち歩く,突然衝動的な行動を起こす,トイレに引きこもる,遊びの邪魔をするなどの問題行動を改善させるために,個別指導とクラス対象の社会的スキルトレーニング(CSST)を組み合わせた5回の授業を,1週間に1回ずつ5週間にわたって実施した。その結果,CSST終了後,授業中の児童Aの問題行動はほぼ見られなくなり,休み時間にも友だちと一緒に遊ぶことができるようになった。児童Aの観察者評定,ソシオメトリック指名法による社会測定地位指数,教師評定,そして自宅での保護者評定の得点が上昇した。多動傾向のある児童の教育的支援に関して,個別対応のみならず,クラス集団内での相互作用を考慮した介入を行うことの有効性を示すことができた。なお,実施に当たっては担任教師だけでなく,補助者の必要性を確認することとなった。