著者
若松 克則 島宗 理
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.21-29, 2020-08-20 (Released:2021-08-20)
参考文献数
35

研究の目的 会計事務所の顧客が領収書を整理して提出する行動を、少ない手間、短い時間で作業できる領収書綴りを提供することで増やすことができるかどうかを検討した。研究計画 対象顧客を5群に分け、顧客群間の多層ベースライン法を用いた。場面と参加者 口頭で依頼しても領収書を整理して提出してくれなかった顧客24社を対象とした。介入 ひと月1冊とし、日付ごとに見開き1頁を用意して日付をあらかじめ印刷し、発行日の頁に領収書を貼り付けるだけで済むようにした日記型領収書綴りを開発し、顧客に提供した。行動の指標 実験協力者として参加した仕訳スタッフが担当する対象顧客それぞれについて、領収書を整理して提出していたかどうかを毎月記録した。結果 17社が領収書綴りを使い、14社が継続して領収書を整理して提出するようになった。損益分析により、顧客・月あたり3,238円の利益を得たこと、仕訳担当スタッフもその結果に満足していたこと、実験終了後6年後も顧客による標的行動が維持されていたことがわかった。結論 領収書整理に関わる反応エフォートを低減することで顧客の協力的な行動を喚起し、維持できる可能性が示唆された。