著者
薗田 稔 茂木 栄 宇野 正人 岡田 荘司 杉山 林継
出版者
国学院大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

祭礼・儀礼は、それを担う地域の人々の民俗的、宗教的世界観の表出であるばかりでなく、風土・景観などの自然環境を儀礼的シンボルとして読み変え、祭礼で表現される。という前提に立って、調査研究を進めた。そのため、1、事例研究として、自然環境・風土的に際立った特徴をもつ山間地域の祭、平野部の祭、古代国府の祭、の調査研究に力を注いだ。2、日本全国の祭礼デ-タベ-ス作りが、ある程度完了。今後、民俗学・宗教学・文化人類学の祭礼研究分野に於て、個別研究から脱却した、総合的分析が、可能になるものと期待できる。3、事例研究の対象とした地域の、詳細な報告論文集は、平成2年度末までに出版する計画をもっている。と同時にその研究成果を映像化(映画とビデオ)した。これは、単なる祭礼記録映像ではなく、祭礼研究から得た成果のを分析し、映像的に表現したものである。(成果として提出)日本の祭の構成を自然環境との関係で考える場合、現在までに得た知見では、生活域の立地、古代のマチ作りなどに密接に関わっていることが分かった。特に、古代国府の祭に源を発し、現在に伝承されている各地の国府祭(総社の祭)のコスモロジ-の普遍性と特殊性の調査研究が重要である。日本の祭の普遍的な「山」の信仰の重要な部分を担っているようである。今後、デ-タベ-スを駆使して、日本の祭の普遍性と特殊性の解明、祭の何が祭たらしめているのかという要素の抽出など、今日まで、科学的には不可能であった問題への取組が可能となった。
著者
茂木 栄 薗田 稔 島田 潔 杉山 林継 薗田 稔 宇野 正人 茂木 栄
出版者
国学院大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

日本に於ける祭礼形態の史的類型化のモデル作りを最終目的としてこの課題に取り組んできた。日本の祭り形態の流行には、歴史的に五回波があったと考えられる。第一は主として水田稲作地帯の「田遊び」、折口信夫によれば、この種の祭りは、奈良朝以前より存在していたという。第二は、平安時代後期から始まったとされる神楽、これは全国の山間地域に「霜月神楽」という形で伝承されている。第三は町の祭りとして国府がおかれた地方の中心都市において行なわれいた「国府祭(こうのまち)」である。十一世紀にはその存在が明確になっている。第四は、町の人々の間から発生し、全国の祓いの夏祭りとして広がっていった「祇園祭り」。これは山車をひく全員参加型の祭礼で、全国に爆発的に広がった。第五は、江戸型の神興を担ぎまわる威勢の良い祭り。関東を中心に大きな流行をみた。この中でも、本研究の重点を国府の祭りに置いて調査研究を続けた。平成三年度の現地調査は、長門の国府の祭・数方庭、隠岐総社、隠岐田楽、出羽総社などの調査を行なう。また、これまでの国府祭の調査と資料収集を通じて、ポイントとなる事象、文献、伝承などキ-項目を下記のようにまとめた。1、諸国国府におかれた総社 2、『白山之記』 3、『朝野群載』 4、『時範記』因幡総社、因幡三山、大伴家持 5、播磨総社射楯兵主神社、三ツ山神事、一ツ山神事 6、三輪山麓に鎮座する兵主神社、三山妻争い伝説 7、越中総社二上射水神社築山神事、大伴家持、人身御供伝説 8、下野総社明神お鉾祭、三輪神勧請、人身御供伝説 9、遠江総社淡海国玉神社、裸祭人身御供伝説 10 尾張総社尾張大国霊神社、裸祭人身御供伝説最後に、これまで得られた知見から、祭礼の史的類型の第一形態である国府の祭の共通要素を列記しておく。1,祭りには大和の風土を強く意識していること 2,本来暗闇の祭りであること 3,海での禊があること 4,裸の練り行事があること 5,人身御供伝説が存在していることが多いこと 6,稲に関する儀礼が存在したこと 7,産の信仰があることなどを指摘することが出来た。