著者
田頭 豊 安部 圭亮 小野寺 崇 茅野 伸吾
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.1375-1384, 2023 (Released:2023-12-20)
参考文献数
31

Size-specific dose estimates(SSDE)は,computed tomography(CT)検査における体型の違いを考慮した線量指標であり,これまでvolume CT dose index(CTDIvol)では得られなかった任意の断面のおおよその吸収線量が評価できるようになった.Automatic exposure control(AEC)を使用した場合,CTDIvolは体軸方向に変調された値をとるが,検査終了後に表示される値はスキャン全体の平均値mean CTDIvolであり,局所のSSDE計算にどちらの値を使用するかにより値が変わることが予想できる.本研究では,SSDE算出にmean CTDIvolを用いるか,スライスごとの変調値を用いるかの違いが,局所の臓器線量評価へ与える影響について人体ファントムを用いて検証した.American Association of Physicists in Medicine (AAPM) Report No.220の手順に従いwater equivalent diameterを計算するプログラムを作成し比較検討した結果,mean CTDIvolを用いて計算されたSSDE(local-SSDEmean)は,肺野領域においてCT撮影による被ばく線量を評価するWebシステム(WAZA-ARIv2)で算出される臓器線量より18%–56%の過大評価となった.これに対しCTDIvolの変調値を用いて計算されるlocal-SSDEmodulatedは,臓器線量を10%–13%の相対誤差で評価できた.また体軸方向全域のlocal-SSDEを平均した値SSDEは,CTDIvolにいずれの方式を採用された場合でも両者の間に有意差を認めなかった.CT画像のdigital imaging and communications in medicine(DICOM)ヘッダータグ(0018, 9345)にmean CTDIvolが格納され,スライスごとに変調されたCTDIvolの値が得られない場合は,計算される局所のSSDEは誤差を多く含有し撮影部位の臓器線量を正しく反映しない.その場合には,スキャン全体のSSDEの平均値SSDEに臓器ごとの係数を乗じて局所の臓器線量を評価する手法は使用可能である.
著者
村松 駿 茅野 伸吾 佐藤 和宏
出版者
特定非営利活動法人 日本CT技術学会
雑誌
日本CT技術学会雑誌 (ISSN:24342769)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.1, 2020 (Released:2020-09-07)
参考文献数
34

重要な要点・ボウタイフィルタの形状で実効エネルギーは変化する.・高精細モード使用時は,ボウタイフィルタが変化しても実効エネルギーは変化しない.・通常モード使用時は,ボウタイフィルタのサイズが大きくなると実効エネルギーが高くなる. 要旨【目的】 超高精細CTにおける撮影モード3種類super high resolution (SHR),high resolution (HR),normal resolution (NR)とボウタイフィルタ2種類 (M), (L)の組み合わせによるX線線質を評価し,造影コントラストの変化を明らかにすることである.【方法】 X線線質の評価は,非接続形X線出力アナライザPiranhaを使用してhalf-value layerを取得し,実効エネルギーに換算して評価した.造影コントラストの評価は,Multi-Enegy (ME) ファントムを使用してヨードロッドのCT値の変化を評価した.【結果】 SHRおよびHRモードの場合,ボウタイフィルタが変化しても回転中心部の実効エネルギーは変わらなかった.NRモードの場合,ボウタイフィルタMのとき実効エネルギーはSHRおよびHRモードと同等であった.ボウタイフィルタLのとき,実効エネルギーはMより有意に高かった.MEファントムのCT値は,SHRおよびHRモード,NRモードでボウタイフィルタMのとき,ほぼ同じ値であったが,NRモードでボウタイフィルタLのときは,わずかに低い値であった.【結語】 NRモードでボウタイフィルタ Lの場合,他のモードに比べて実効エネルギーが高く,その結果CT値が低下する.