著者
澤井 照光 佐々野 修 辻 孝 中村 司朗 七島 篤志 内川 徹也 山口 広之 安武 亨 草野 裕幸 田川 泰 中越 享 綾部 公懿 福田 豊
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471081)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.323-326, 1996-05
被引用文献数
4 1

症例は68歳, 男性.1992年4月6日, S状結腸癌のためS状結腸切除術を受け, 以後半年毎に大腸内視鏡検査によってfollow upされていた.1994年5月27日の大腸内視鏡検査で上行結腸に皺集中を伴う軽度隆起した発赤が認められ, 易出血性であった.生検の結果はgroup IIIであったが内視鏡所見よりsm massiveの腺癌と考えられ開腹術が行われた.手術所見はH<SUB>0</SUB>P<SUB>0</SUB>S<SUB>1</SUB>N (-), stage IIで, 第3群リンパ節郭清を含む右半結腸切除術が施行された.切除標本をみると皺集中を伴う5×8mmの平坦な病変であるが, その周囲は軽度隆起しており, 粘膜下へのmassiveな腫瘍細胞の増殖が示唆された.病理組織学的には深達度ssの高分化腺癌で, ly<SUB>1</SUB>, v<SUB>0</SUB>, リンパ節転移は陰性であった.Ki-67/AgNOR二重染色を施行した結果, Ki-67陽性細胞の平均Ag-NOR数は9.98と高く, このことが垂直方向への浸潤と関連しているのではないかと考えられた.