- 著者
-
五十嵐 彩夏
相田 潤
草間 太郎
小坂 健
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.3, pp.183-190, 2020-03-15 (Released:2020-04-01)
- 参考文献数
- 28
目的 海外での研究では職場での受動喫煙暴露は,事務系労働者に比べて,建設業や運輸業などの肉体労働者で多いことが明らかになっている。日本では職場での受動喫煙への暴露には,社会経済状況による格差が存在することが明らかになっているが,業種と職場での受動喫煙状況との関連を明らかにした研究は我々の調べた限り存在しない。本研究は業種と職場での受動喫煙との関連を明らかにすることを目的とした。方法 2017年に日本で20-69歳の男女5,000人を対象として行われたウェブ調査を用いて,横断研究を行った。日本標準職業分類の11業種に就業している者および職場での受動喫煙について回答した者のうち,直近30日以内に喫煙していない者を分析対象とした(n=1,739)。独立変数は業種とし,①管理的・専門的・技術的,②事務的,③販売・サービス,④保安,⑤農林漁業,⑥生産工程・運搬・清掃・包装等,⑦輸送・機械運転・建設・採掘の 7 群に分類した。従属変数は職場での受動喫煙の有無とした。共変量として性別,年齢,学歴,所得,職場の喫煙環境,受動喫煙に対する意識を用いた。ポアソン回帰モデルを用いて,業種の違いによる職場での受動喫煙の Prevalence ratio を算出した。結果 分析対象者は平均年齢43.3歳(SD=11.9),男性60.5%で,過去 1 か月間に職場で受動喫煙があった者は529人(30.4%)であった。受動喫煙があった者の業種内での割合は,①管理的・専門的・技術的で171人(27.9%),②事務的で155人(27.1%),③販売・サービスで116人(33.7%),④保安で10人(45.5%),⑤農林漁業で 7 人(31.8%),⑥生産工程・運搬・清掃・包装等で39人(34.5%),⑦輸送・機械運転・建設・採掘で31人(58.5%)であった。多変量解析の結果,非喫煙者において,事務的に比べ販売・サービスで1.27倍(95%信頼区間(95% CI):1.04-1.56),保安で1.61倍(95% CI:1.02-2.56),輸送・機械運転・建設・採掘は1.75倍(95% CI:1.33-2.31)職場で受動喫煙の暴露があった。結論 改正健康増進法により事業所での受動喫煙防止対策はすすむが,業種によっては職場での受動喫煙防止対策が取り残される可能性があるため,職場での受動喫煙状況をモニタリングする必要がある。