著者
荒川 房江 秋山 ますみ 豊田 梓 高橋 恵美 阿瀬川 満枝
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.172, 2005

〔はじめに〕<BR>当院では、整形外科で牽引手術台を使用する際バスタオルで前腕を巻き、離被架につり下げる方法で長時間上肢の固定を行っていたが、いくつかの問題点が生じていた。そのため問題点を改善する目的で手台を作成したが、痛みを訴える患者があった。その痛みの原因を腕の太さと手台のサイズの不一致と考え、数種類のプロトタイプを作成し有効性を検証した。<BR>〔研究方法〕<BR>1.対象:手術室看護師6名<BR>2.手台の作成:3種類(S/M/L)のソフラットシーネを約40cmのところで屈曲させ肘関節部に約10cm四方の穴を開け、周囲を綿包帯で覆い、離被架につり下げるようにした。<BR>3.手台の実施:対象者の肘関節部の太さを測定し、3種類の手台で1時間体位を保持し、10分毎に痛みのレベルを4段階で評価した。<BR>〔結果および考察〕<BR>Sサイズの場合は腕の太さにかかわらず全員が時間の経過とともにレベル1-3の痛みを訴えている。その原因として最も多かったのは圧迫による痛みでありそのことにより体位の維持が出来なかった。よって肘関節の周囲が22.0cm以上の人には不適切と考えられる。Mサイズの手台では、腕の太さが22.0cm-23.0cmの人はほとんど痛みがなく、体位固定に安定性が見られた。一方27.5cmの2名には圧迫によりレベル2の痛みの出現が見られたことから、22.0cm-23.0cmの人にはMサイズの手台が適切であったと考えられる。Lサイズの手台では22.0cm-23.0cmの人には手台が大きすぎることで腕の引き抜きやずれが起こり、レベル2-3の強い痛みが出現し、固定の安定性もなく術者の視野確保の意味でも不適切であったと考えられる。27.5cmの2名には痛みの出現がなく体位を保持できたことから手台が適切であったと考えられる。腕の太さと手台のサイズの関連性を考慮したことにより、個々のニーズに応じてより安全安楽を考えた体位固定の工夫が出来たと考えられる。<BR>〔終わりに〕<BR>今回の研究では、対象人数が少なく腕の太さにバラつきがなかったため、Sサイズが適切とされる腕の太さやM・Lサイズの境界線といった細かい基準を明らかにすることが出来なかった。今後さらに研究を進めることでスタッフ間での統一を図り、いかに効果的な固定方法でも長時間の同一体位は、患者にとって精神的なストレスになることも考慮し、より安全で安楽な体位固定が出来るよう検討していきたいと思う。