著者
井上 さくら 荒木 徳博 木村 知史
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.127-132, 2001-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9

本研究では創造的思考に着目し, 新しい発想を生み出そうとする場合の香りの効果を検討した。実験では創造性検査の一種である用途テストを用い, 「カンヅメのあきカン」の使い方を自由発想で20分間記述させた。用途テスト開始12分後にローズマリー, ペパーミント, オレンジ (以上香り呈示群), 香りなし (統制群) のいずれかを呈示した。回答は, 分類基準に従い, カンヅメのあきカンのもつ容器的使途と類似性の高い発想-Tタイプ-と, 類似性が低く独創的な発想-Hタイプ-の2種類のカテゴリーに分け, 各カテゴリーにおける香り呈示前後の回答数の変化を求めた。香り呈示群と統制群の回答数の変化を比較した結果, Tタイプでは, 香り呈示群と統制群との間に差はみられなかった。一方, Hタイプでは, ローズマリーとペパーミント呈示群は統制群と比較し回答数が有意に増加し, オレンジ呈示群では有意差はなかった。このことより, ローズマリーやペパーミントの香りに独創的な発想を促す効果がみられることが示唆された。さらに, 創造的態度得点の低い人がローズマリーやペパーミントの香りを嗅ぐと, より一層この効果が高くなる傾向がみられた。