著者
岡﨑 裕之 竹田 修三 竹本 幸未 水之江 来夢 田中 沙和 松本 健司 新藤 充 荒牧 弘範
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-229, 2016 (Released:2016-08-08)

【目的】糖尿病は「現代の国民病」といわれている。治療薬であるチアゾリジン(TZD)誘導体はPPARγを活性化し、アディポネクチン(AdipoQ)遺伝子の発現を亢進させることで症状を改善する。一方で、浮腫などのoff-target効果が知られている。この原因は不明であるが、TZDの物性に起因する可能性などが示唆されている。したがって、TZDとは「全く異なる化学構造」を有するPPARγの活性化剤が希求されている。ボンクレキン酸(BKA)は、ココナッツ発酵食品から単離された脂肪酸様の構造を有するカビ毒である。これまでに我々は、BKAがPPARγを選択的に活性化すること見出している(JTS., 40:223, 2015)。しかし、細胞膜透過性には課題があった。本研究では、この課題を克服し、PPARγの刺激作用を示す新規BKAアナログ合成し(9種類)、AdipoQ遺伝子および肥大化脂肪細胞に与える影響を検討した。【方法】常法により、脂肪前駆細胞であるラット3T3L1細胞をDEX/IBMX/insulinで脂肪細胞に分化させ、ピオグリタゾン(PIO)およびBKAアナログで処理し、肥大化脂肪細胞に与える効果を比較した。脂肪細胞の染色はOil Red O染色にて行い(JTS, 38:305, 2013)、脂質の定量はAdipoRedTM(Lonza)を用いた。遺伝子の発現はリアルタイムRT-PCRにて解析し、レポータージーンアッセイにてPPREの活性化を評価した。【結果および考察】既存薬のPIOを対照として、3T3L1細胞をBKAアナログで処理し、PPARγの活性化の有無を解析した。アナログの中で、BKA-#2がPIOと同程度の転写活性を示した。次に、肥大化脂肪細胞をPIOおよびアナログで処理した結果、PIOと同様にアナログにより脂肪細胞の顕著な小型化が確認された。また、AdipoQ遺伝子のレベルを解析した結果、発現が亢進していた。チアゾリジン薬の副作用に「浮腫」が挙げられる。HEK293(不死化ヒト胎児腎細胞)細胞を用いた検討で、PIOは浮腫に関与するSLC4A4のレベルには影響を与えなかったが、BKA-#2はその顕著な低下作用を示した。本研究でBKA-#2の有望性が示された。