著者
天笠 志保 荒神 裕之 鎌田 真光 福岡 豊 井上 茂
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.585-596, 2021-09-15 (Released:2021-09-07)
参考文献数
71
被引用文献数
2

抄録 スマートフォンやウェアラブル端末などのモバイルヘルスデバイス(mHealthデバイス)の普及に伴い,医療・健康分野における情報通信技術の重要性が高まっている。本総説では,mHealthデバイスを用いた身体活動評価の現状を概観し,主要な研究成果の整理を通じて,mHealthデバイスを用いた身体活動研究の今後を展望する。mHealthデバイスの活用により,調査方法の主流であった質問紙を用いた主観的な評価とは異なり,客観的な身体活動の評価を大規模でリアルタイムに実施することが可能となっている。また,mHealthデバイスはデータを自動で収集し蓄積しているため,遡及的に多様な分析が可能である。とくにスマートフォンは利用者数が多く,大規模モニタリングや大規模介入に資する可能性が高い。一方,手首装着型のウェアラブルデバイス(リスト型デバイス)は,スマートフォンに比べると利用者数は少ないものの,より精度の高い睡眠などスマートフォンで取得困難なデータを含めた24時間の行動評価が可能となっている。このため,身体活動の総量のみならず,強度,継続時間,頻度,種類,時間帯など多様な観点を含む身体活動の質に着目したより精緻な分析が実現する。さらに,リスト型デバイスは,心拍数などの生体情報や位置情報を測定する機器が搭載されているものもあり,これらのデータをデバイスの加速度情報と組み合わせることで,身体活動のより具体的かつ詳細な評価が可能になると考えられる。主要なmHealthデバイスによる身体活動評価の妥当性は多くの研究によって確認されており,研究用に開発された歩数計や加速度計と比較可能である。mHealthデバイスを用いた身体活動の評価は,対象者の代表性やデータの継続性等に関する課題,プライバシーポリシーを踏まえた倫理的な配慮の必要性があるものの,個人の健康管理ツールとしての用途だけでなく,身体活動に関する疫学研究や臨床研究,さらには身体活動指標を利用した社会サービスなどの多様な場面での活用が期待される。
著者
天笠 志保 荒神 裕之 鎌田 真光 福岡 豊 井上 茂
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.20-143, (Released:2021-06-11)
参考文献数
71

抄録 スマートフォンやウェアラブル端末などのモバイルヘルスデバイス(mHealthデバイス)の普及に伴い,医療・健康分野における情報通信技術の重要性が高まっている。本総説では,mHealthデバイスを用いた身体活動評価の現状を概観し,主要な研究成果の整理を通じて,mHealthデバイスを用いた身体活動研究の今後を展望する。mHealthデバイスの活用により,調査方法の主流であった質問紙を用いた主観的な評価とは異なり,客観的な身体活動の評価を大規模でリアルタイムに実施することが可能となっている。また,mHealthデバイスはデータを自動で収集し蓄積しているため,遡及的に多様な分析が可能である。とくにスマートフォンは利用者数が多く,大規模モニタリングや大規模介入に資する可能性が高い。一方,手首装着型のウェアラブルデバイス(リスト型デバイス)は,スマートフォンに比べると利用者数は少ないものの,より精度の高い睡眠などスマートフォンで取得困難なデータを含めた24時間の行動評価が可能となっている。このため,身体活動の総量のみならず,強度,継続時間,頻度,種類,時間帯など多様な観点を含む身体活動の質に着目したより精緻な分析が実現する。さらに,リスト型デバイスは,心拍数などの生体情報や位置情報を測定する機器が搭載されているものもあり,これらのデータをデバイスの加速度情報と組み合わせることで,身体活動のより具体的かつ詳細な評価が可能になると考えられる。主要なmHealthデバイスによる身体活動評価の妥当性は多くの研究によって確認されており,研究用に開発された歩数計や加速度計と比較可能である。mHealthデバイスを用いた身体活動の評価は,対象者の代表性やデータの継続性等に関する課題,プライバシーポリシーを踏まえた倫理的な配慮の必要性があるものの,個人の健康管理ツールとしての用途だけでなく,身体活動に関する疫学研究や臨床研究,さらには身体活動指標を利用した社会サービスなどの多様な場面での活用が期待される。
著者
天笠 志保 荒神 裕之 門間 陽樹 鳥取 伸彬 井上 茂
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
2021

本研究では, 感染症の流行時, 特にSARS流行時に実施された身体活動研究を振り返った上で, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における身体活動研究の現状を明らかにした。 特に, 報告されている研究として主である身体活動の記述疫学的研究のレビューを行い, COVID-19の流行が身体活動量に与えた影響を明らかにした。スマートフォンのアプリケーションを用いた国際比較研究によると, COVID-19流行前と比較して, ロックダウンや外出制限下では最も歩数が低下していたが, 低下の程度は各国で異なった。 我が国では, 流行前の2月上旬と比較して, 4月の緊急事態宣言下に歩数がおよそ30%減少していた。また, COVID-19流行下で多く実施されたインターネット調査の結果によると, 座位行動時間が増加し, 中高強度の身体活動時間が減少したことが報告されている。 しかし, これらの研究はロックダウンや外出制限下における一時的な状況を示しているに過ぎず, 今後, 長期的な視点を持って, COVID-19の流行やそれに伴うライフスタイルの変化が日常の身体活動や身体活動の格差に与えた影響を明らかにしていく必要がある。また, インターネット調査やデバイスを用いた身体活動研究が浸透し, 今後さらなる研究が進むことが期待されるが, 対象者の代表性に留意する必要がある。