著者
荻野 慎太郎 原 章 長尾 智晴
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.1516-1526, 2005-06-15

本研究では長期記憶性の面から,よりリアルな人工市場の構築について考察する.投資エージェントによって構成される人工株式市場が現実の市場に似た変動をするとき,市場を構成する投資戦略とその構成比がどのようなものになっているかを検証し,現実の市場における株価変動メカニズムを解析することを目的としている.市場を構成するエージェント群のとる戦略を木構造プログラムで表し,それらのエージェント取引によって生じる株価変動の統計量が実際の市場変動に類似するようにエージェント群の効率的な最適化と解析を行うため,先に筆者らが提案した進化の過程でエージェントのグループ分けと各グループのプログラム最適化を同時に行う手法である自動グループ構成手法ADGを用いた.現実市場の複雑でカオティックな動態が,提案された人工市場において現れているかを,より確からしい市場構築をするという観点から実験的に示し,その解析結果を基にカオス成分を加味してより現実に即した人工市場構築を行った.