著者
西家 宏典 長尾 智晴
出版者
一般社団法人 日本金融・証券計量・工学学会
雑誌
ジャフィー・ジャーナル (ISSN:24344702)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.79-96, 2021 (Released:2021-04-23)
参考文献数
13

従業員クチコミサイトの従業員クチコミの文章情報から「働きがい」「働きやすさ」の代替指標としての時系列スコアを生成し, 企業業績及び株式パフォーマンスとの関連性を分析した. その結果, 働きがい及び働きやすさスコアの改善は,2∼3年程度遅れて企業の成長性や収益性にプラスの影響をもたらし, 逆に企業のサステイナブル成長率の向上は,1 年程度遅れて働きがいを向上させることが分かった. また株式パフォーマンスとの関連性については, 両スコアの改善ポートフォリオは 1年程度遅れて統計的に有意な正の超過リターンをもたらし, 株式市場におけるミス・プライシングが発生していることが示唆された一方, 働きやすさのみの改善ポートフォリオでは統計的に有意な超過リターンは観測されなかった.
著者
宗藤 大貴 長尾 智晴
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.1-6, 2019-11-01

人工知能の発展により,様々な論理パズル問題を人間の事前知識なしで解く能力は年々向上している.しかし,パズル問題の創作に関しては,解が一つでないことや生成された問題の評価が難しいことから解答に比べ困難なタスクである.本稿では,パズル問題の中でも,持ち駒があるなどの性質から創作が難しいと考えられる詰将棋を題材とする.エキスパートによる詰将棋創作では,短手数の詰将棋や長手数の余詰めのある詰む局面の情報を利用する.この考え方に基づき,進化計算法の 1 つである遺伝的アルゴリズムによって,局面の変換を最適化することで長手数の詰将棋を生成する手法を提案する.実験の結果,最長で 31 手詰めの詰将棋が生成できることが確認できた.
著者
片岡 寛明 原 章 長尾 智晴
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.3232-3241, 2003-12-15
参考文献数
12
被引用文献数
5

本論文では,遺伝的プログラミング(Genetic Programming; GP)を改良した手法である遺伝的オートマトン(Genetic Automata Generation; GAUGE)を提案し,本手法が不完全知覚をともなうエージェントの行動制御に有効であることを示す.不完全知覚問題に対する従来手法としては,インデックスメモリを用いる手法やGPオートマトンが提案されている.しかし,インデックスメモリは解が複雑になると探索空間が膨大になり最適化が困難になる.また,GPオートマトンの性能はあらかじめ設定した状態数に左右される,といった問題点がある.GAUGEでは,個体は記号間にパスを張りめぐらしたグラフ構造をとり,内部状態の違いによる条件分岐を自動生成することにより問題解決を行う.また,本手法は問題に必要な状態数を進化過程で獲得するため,GPオートマトンのように状態数に対する試行錯誤を必要としない.本論文では,本手法を迷路探索問題やタルタロス問題に適用しその有効性を検証する.実験の結果,本手法は,従来手法と比べて冗長なノード数を抑えつつ,適切に状態数を設定したGPオートマトンと同等の性能を示した.問題解決に必要な状態数が未知の問題に対しては本手法が有効であると考えられる.Generally, it is difficult for Genetic Programming (GP) to solve perceptual aliasing problems. In previous work to solve such problems, Index memory and GP-Automata have been proposed. However both of the methods have problems. Since the search space of an index memory is huge, it is difficult to obtain a well tuned program by GP. The performance of GP-Automata is influenced by the fixed number of states. Moreover, individual structure of both methods is tree structure.Therefore, redundant nodes will increase and search efficiency will get worse.In order to solve such a problem, we propose a new method, Genetic Automata Generation; GAUGE.Individuals in GAUGE have structure like an automata. Our method automatically obtains the adequate number of states for solving a given task.Several experiments to investigate the performance of our method were executed using Map Search Problems and Tartarus Problems. These experimental results showed that GAUGE was applicable to perceptual aliasing problems. And GAUGE showed the performance equivalent to a well tuned GP-Automaton.
著者
和田 裕貴 長尾 智晴
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.345-346, 2017-03-16

近年,深層学習は画像認識や音声認識の分野で目覚ましい成果を上げている.また,深層学習を強化学習に応用するという深層強化学習の研究もなされており,適用先であるアーケードゲームにおいては人間より高得点を示したという報告もされている.そこで,本稿では深層強化学習を株式売買に応用した手法を提案する.本手法では,株価やテクニカル指標の時系列データ,投資家の状態から,将来の報酬の和を最大化するような方策を学習する.さらに本手法では,従来手法のように全所持金で株を購入し,売却時は全ての株を売るといったような単純な売買戦略ではなく,売買株数の最適化も含めて売買戦略の構築を行う.
著者
范 春 長尾 智晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, 1997-08-13

近年CG・画像処理技術の発展に伴い特殊効果を用いた画像を生成する技術が飛躍的に向上したが, 我が国は米国等に比較して一歩遅れているのが現状である. そこで筆者らはバーチャルアクターシステムと称する"実際の演技を伴わず, あたかもその仮想あるいは実在の人物がそのような演技をしたかのような映像を作成する"計算機によるシステムを構築中である. これまでにもそのような映像を作成した例は報告されているが, 本システムでは画橡処理技術によって必要な処理の一部を自動化することによりオペレータの作業の負担を可能な限り軽減することを目的としている. 本システムは画像処理とCGの融合システムであり, 現在は顔領域抽出など, 本システムにおける要素技術の開発を行なっている. 本稿では, 本システムの概要と課題, および動画像中の人物の顔の置き換えに関する基礎的な実験例について報告する.
著者
平津 大輔 長尾 智晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.96, no.583, pp.279-286, 1997-03-17
被引用文献数
3

セルラーニューラルネットワーク(Artificial Cellular Neural Network; ACNN)とはユニット間の結合をユニットの近傍のみに制限したニューラルネットワーク(Neural Network; NN)であり,ネットワーク構造の観点からすれば階層型NNを包含し,完全結合型(相互結合型)NNに包含されるという,両者の中間にあるといえるNNである.ACNNは階層型NNで実現するには困難な信号処理を行うことが可能であり,NNを記述する情報量が完全結合型NNと比較して少ないという利点を持つ.本研究では追跡ゲームにおける追跡者の行動決定を3次元ACNNに行わせ,柔軟な状況判断が可能な3次元ACNNを作成し,その有効性を確認した.なお,3次元ACNNの作成においては遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm; GA)を使用した.
著者
長尾 智晴 安居院 猛 長橋 宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.557-565, 1993-03-25
被引用文献数
60

本論文では,任意の点列としてあらかじめ与えられたモデル図形に相似な図形を,ノイズを多く含む2値画像から抽出する手法について述べている.原画像中の相似図形の位置,拡大倍率,回転角度はすべて未知とする.この抽出処理は,モデル図形を原画像中の図形に重ねたときに,最もよく重なるときのモデル図形の重心のx,y座標,拡大倍率,回転角度を求める処理であり,これら四つのパラメータによる空間において,図形の重なりを評価値にしたときの最大値探索問題とみなすことができる.そこで本論文では,最適値探索手法として知られている遺伝的アルゴリズムの考え方を用いた遺伝的手法を提案している.本手法では,特に,探索空間に対する前処理,および親の個体の適応度に応じた遺伝規則の調整を考慮したアルゴリズムを提案している.そして,本手法がこのようなパターンマッチングの問題に有効に適用できることを,実験結果を用いて示している.
著者
長尾将宏 長尾智晴
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.377-378, 2014-03-11

近年Twitterなどから取得したソーシャルメディアデータを用いて株式市場を予測する研究が盛んに行われている.Tweetの解析結果と株価には,一定の相関があるとする結果が多く報告されているが,従来研究の多くはすべてのTweetを抽出し,平等に扱っている.しかしながらTwitterに書き込んでいるユーザの集合と,実際に取引をしているトレーダの集合は通常異なると考えられる.そこで本研究では,Twitterから得たTweetやその投稿者の情報などを考慮して,株式市場の変動を予測することを目標とする.
著者
荻野 慎太郎 原 章 長尾 智晴
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.1516-1526, 2005-06-15

本研究では長期記憶性の面から,よりリアルな人工市場の構築について考察する.投資エージェントによって構成される人工株式市場が現実の市場に似た変動をするとき,市場を構成する投資戦略とその構成比がどのようなものになっているかを検証し,現実の市場における株価変動メカニズムを解析することを目的としている.市場を構成するエージェント群のとる戦略を木構造プログラムで表し,それらのエージェント取引によって生じる株価変動の統計量が実際の市場変動に類似するようにエージェント群の効率的な最適化と解析を行うため,先に筆者らが提案した進化の過程でエージェントのグループ分けと各グループのプログラム最適化を同時に行う手法である自動グループ構成手法ADGを用いた.現実市場の複雑でカオティックな動態が,提案された人工市場において現れているかを,より確からしい市場構築をするという観点から実験的に示し,その解析結果を基にカオス成分を加味してより現実に即した人工市場構築を行った.
著者
中山 惠太 白川 真一 矢田 紀子 長尾 智晴
出版者
進化計算学会
雑誌
進化計算学会論文誌 (ISSN:21857385)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.12-21, 2012 (Released:2012-06-11)
参考文献数
12

Non-photorealistic rendering (NPR), a research about non-photorealistic images is a major field of research in image processing. Painterly rendering is a method that creates artistic images based on photo images and important in NPR. Recently, painterly rendering methods using evolutionary algorithm are studied. Those studies have intended to optimize the process of creating artistic images by using evolutionary algorithm. Most of those studies have focused on generating and placing strokes as a painting operation. On the other hand, some researchers proposed painterly rendering methods using existing art images. They have created painting images which have unique colors and textures of existing art images, called “painting style”. We propose a new method to create artistic images based on photo images and existing art images by using Genetic Algorithm (GA). Our method operates putting the “patches” on a canvas image repeatedly as a painting operation. We generate the “patches” by copying a part of the existing art images and put them on the canvas image in mutation of GA. We exchange pixels in the same region of two canvas images in crossover of GA. In the process of optimization, our method brings the canvas image close to the photo images. Our method evolutionarily creates the painting images which have the painting styles of existing art images.
著者
伊藤 有気 長尾 智晴
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.239-240, 2019-02-28

少ない試行回数でも効率的に最適解を発見できる手法として,ベイズ最適化が近年注目を集めている.しかし,既知の探索点が極端に少ない場合には探索性能が悪化するという欠点がある.本研究では,実験コストが高く試行回数に強い制約があるケースに対して,次の探索点を既知の探索点の周辺に制限する改良手法を提案する.ベンチマーク関数を対象とした実験ではより安定して高精度な解を獲得することに成功した.また,本手法を人工光型植物工場での作物の重量最大化問題に適用した.6変数で約10試行という限られた実験回数ながら,従来よりも成長量の大きい環境条件を発見することに成功した.
著者
田澤 和子 白川 真一 長尾 智晴
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.800-809, 2008-10-15
参考文献数
24

従来の神経回路網では,与えられた問題に応じて階層型や相互結合型などの基本構造を選択し,対応する学習方法を用いて結合荷重やしきい値を調整するのが一般的である.しかし,あらかじめ選択した構造で,与えられた問題を必ず解けるとは限らない.そこで,遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて,任意性が高く未知の問題に柔軟に対応できる神経回路網の獲得を可能とするFlexibly Connected Neural Network(FCN)が提案されている.FCNはエイリアス問題を含むエージェントの行動制御などで有効性を示している.しかし,従来のFCNでは中間ユニットの個数は経験的に決定していた.あらかじめ与えた中間ユニットの個数が適切な場合は問題を解くことができるが,中間ユニット数が足りなければ問題の解は得られず,多過ぎると冗長な部分が増え最適化が困難になるという問題点があった.本論文では,FCNに進化過程で中間ユニット数を増減させる拡張を導入する.本手法は,中間ユニット数を進化によって自動的に決定するため,中間ユニットの個数に対する試行錯誤を必要としない.このユニット数自動決定型FCNを,静的環境での未学習マップにおけるエージェントの行動制御を扱うタルタロス問題に適用し,有効性を示すとともに,獲得した構造による行動規則の解析結果について述べる.
著者
武田 真人 矢田 紀子 長尾 智晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.1631-1639, 2011-10-01
被引用文献数
1

人は不審物に関する情報がなくても,普段見かけない物に注目し意識を向けることによって結果的に不審物を見つけることができる.このような検知が可能なのは,環境を繰り返し観測することによって次第に反応しなくなるように刺激が記憶されたり,反応しなくなるような領域が形成されたりすることで環境の通常状態といえるものが記憶されているためと我々は考えている.そこで本論文では,監視カメラに代表される固定カメラからの映像を用い,環境に応じてそのような通常状態を表現するネットワークモデルを提案する.実験では,車両や歩行者を検知対象の異常として定義した侵入物体検知問題を扱い,異常とされる領域への提案モデルの出力を評価することでその有効性を検証した.
著者
今井 繁 長尾 智晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理
巻号頁・発行日
vol.98, no.58, pp.59-66, 1998-05-21
被引用文献数
3

自動作曲を人間が作曲を行うための補助的なものと考えると, 作曲のための素材として, バラエティに富む多様な曲を人間に対して提供することが必要となると考えられる.以上の考えに基づき, ランダムな音符列を遺伝的アルゴリズム(GA)により一般的な音楽理論に適合させていくという手法を用いて作曲を行った.その際, コード進行とメロディを決定する双方のプロセスに対してGAを適用した.また, 生成された曲に対する人間の主観評価実験を行ったところ, 本手法により定めた適応度関数は人間の評価を的確に反映していることを確認した.
著者
長尾 智晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解
巻号頁・発行日
vol.97, no.458, pp.17-24, 1997-12-18
被引用文献数
2

本稿では, 画像中の2次元図形・3次元物体の位置・大きさ・回転角度などを決定する処理である図形・物体のポジショニング処理について概説している. 本処理に対して従来から提案されているいくつかの手法について述べた後, 本処理には最適化手法が有効であることについて述べ, 遺伝的アルゴリズムを用いた手法を提案している. そして, 遺伝的アルゴリズムを用いた図形・物体のポジショニングの事例として, モデルを用いた2次元図形と3次元物体のポジショニング, 人物の顔領域抽出, 画像中の左右対称領域の抽出について, それらの適用方法と実験例を示すことによって遺伝的アルゴリズムを用いる手法の有効性を示している.
著者
平津 大輔 長尾 智晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.98, no.577, pp.1-8, 1999-02-05
被引用文献数
3

セル型神経回路網(Artificial Cellular Neural Network; ACNN)とはユニット間の結合をユニットの近傍のみに制限したニューラルネットワーク(Neural Network; NN)である. 階層型ニューラルネットワークや完全結合型ニューラルネットワークを一般的なICとして実現する際は信号線の交錯, 信号の遅延といった難題に阻まれ, 素子の集積化, 高密度化が容易ではないが, セル型神経回路網は各素子(ユニット)を結ぶ結線の交錯という問題から解放される構造のため, ハードウェアとしての実現がより容易であると推測される. 本報告では強化学習の分野において難題であるとされるSuttonの迷路をACNNに解かせることにより, ACNNが持つ時系列信号処理能力を示す.