- 著者
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木村 聖路
工藤 育男
鈴木 秀和
福士 道夫
坂田 優
菅 三知雄
相沢 中
- 出版者
- The Japan Society of Coloproctology
- 雑誌
- 日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.5, pp.422-427, 1995-06
- 被引用文献数
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症例は49歳,男性.平成4年8.月15日,突然の左下腹部痛が出現し,当科入院.諸検査にて腸間膜腫瘍と診断した,血中CEA値が高値を示し,CT像は左側骨盤内に隔壁を有する嚢胞性腫瘍を示した.11月9日に手術を施行.S状結腸間膜に原発腫瘍があり,ダグラス窩から左下横隔膜腔にかけて粟粒大の粘液様分泌物が散在していた.摘出した腫瘍は内腔に粘液を多量に含んだ鶏卵大の嚢胞で,嚢胞壁の組織学的所見は隣接する大腸と同一の粘膜層,粘膜下層,筋層を有しており,重複腸管と診断された.さらに嚢胞内壁に配列する高円柱状細胞が低悪性度の粘液嚢胞腺癌に変化しており,重複腸管の腫瘍化と考えられた.粘液は嚢胞壁を破壊して壁外へ進展しており,腹腔内粘液にも同様の腫瘍細胞を確認した.S状結腸に隣接する重複腸管を原発巣とする腹膜偽粘液腫のきわめて稀な1例と考えられた.