- 著者
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中澤 潤
八木 龍浩
小野 美紀
中澤 小百合
菅 治子
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 千葉大学教育学部研究紀要. 第1部 (ISSN:05776856)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, pp.213-227, 1987-02-26
- 被引用文献数
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幼児期の「話しことば」及びそれに関わる要因の発達過程を458名の幼稚園児を対象に分析した。「話しことば」に関わる基礎的要因として,語い,性格,交友関係,知識・表現をとりあげた。年齢に伴い,語い年齢,知識・表現は当然のことながら上昇した。保育年数が増加するにつれ,孤立児は減少し,また知識・表現も上昇した。性差は性格にみられ,男児は女児より「活動性大」「反抗的」で,女児は男児より「あたたか」であった。「話しことば」の行動評定の結果は,年齢にともなってほとんどの項目で評定段階が上昇すること,また,一部の項目で男女差,保育年数による差のあることを示した。「話しことば」の行動評定を因子分析したところ,5歳児では「遊びの中のことば」「意志・意見の表明」「教師への話しかけ」「しつけられることば」の4因子,4歳児では「遊びの中のことば」「教師への話しかけ」「しつけられることば」の3因子,3歳児では「子ども同士の会話」「教師への働きかけ」の2因子が抽出され,発達に伴い「話しことば」は分化していった。5歳児で抽出された4因子に基づいて因子得点を算出した。「意志・意見の表明」以外の3因子で5歳は4歳より高く,「遊びの中のことば」「しつけられることば」は保育年数が多い程高かった。「意志・意見の表明」は性格検査の「反抗的」と負相関,「教師への話しかけ」が「あたたかさ」と正相関を示した。さらに社会的地位指数と「遊びの中でのことば」は正相関,「意志・意見の表明」と負相関であった。これらの大まかな発達傾向について日常の保育との連携の中で,さらに詳細に検討を行う。