著者
原 佑介 菅原 彩華 山田 クリス孝介 遠藤 慶子 芦谷 早苗 五十嵐 香織 曽我 朋義 神成 淳司 黒田 裕樹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.499-513, 2020-12-15 (Released:2020-12-24)
参考文献数
29

ウンシュウミカンの成分分析では,高水溶性のイオン性低分子を網羅的に探索した研究はほとんど無い.本研究では,静岡県三ヶ日産ウンシュウミカンの ‘青島温州’ や ‘興津・宮川早生’ を対象に,高水溶性成分をキャピラリー電気泳動-質量分析法によるメタボローム解析を用いて調査し,品種,グレード,処理方法ごとの総測定データも蓄積させた.この分析では,対象とした151の成分のうち,早生ではメチオニン,グリシン,アスパラギン酸が,青島ではオルニチン,プトレシン,シネフリン,グルタミンが,青島の果汁ではピログルタミン酸,GABA(γ-アミノ酪酸),マロン酸が,有意に多く検出された.さらに,生果と加工品,および加工前後での比較結果を統合し,含有成分量の変化に寄与すると推測される要因も整理した.これらの解析は,三ヶ日産ウンシュウミカンに含まれる高水溶性成分の基礎データとして,今後,代謝や加工による成分変化のさらなる検証につながることが期待される.また,本研究において,クエン酸やGABAなどの機能性表示登録がすでにある成分に加えて,機能性が示唆される成分も検出された.農産物の新規機能性成分表示の検討等においてもメタボローム解析は有用であることを強く示していると言える.