著者
塩見 岳博 斎藤 岳士 石原 光則 和田 光博 林 茂彦 府中 総一郎 神成 淳司
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.35-44, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
20

本研究では,筆ポリゴン,農地ピンおよび土壌図のデータを組み合わせた全国版統合農地データAPIを提案する.農業に関連する各種データや連携基盤の現状と課題を整理した上で,農業生産において基盤となる農地データの利便性向上を図るため,全国の農地データの統合を行った.対象は筆ポリゴン,農地ピンおよび土壌図の3つのデータで,筆ポリゴンをベースとし,他の2つのデータの統合を試みた.結果として,ベースとした筆ポリゴン31,591,036件のうち5,999,291件について,3つのデータが統合でき,成功率は19.0%であった.残りのデータが統合ができなかった原因は,統合対象となるデータの欠落や,統合対象が複数存在するなどのフォーマットの違いによるものであり,その解決には対象とした農地データを整備するルールの統一が求められる.統合した農地データは,農業データ連携基盤WAGRIを通じて,全国版統合農地データAPIとして提供した.その出力形式には,地理情報システム(GIS)における標準フォーマットであるGeoJSONとWebMapTileService(WMTS)を採用し,一度の要求で3つのデータが同時にに取得できたことから,利便性の向上が確認された.今後,統合した農地データが幅広く利用されるための課題としては,データ統合の速度向上や多くのデータを一括でダウンロードする仕組みへの対応などが考えられる.
著者
原 佑介 菅原 彩華 山田 クリス孝介 遠藤 慶子 芦谷 早苗 五十嵐 香織 曽我 朋義 神成 淳司 黒田 裕樹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.499-513, 2020-12-15 (Released:2020-12-24)
参考文献数
29

ウンシュウミカンの成分分析では,高水溶性のイオン性低分子を網羅的に探索した研究はほとんど無い.本研究では,静岡県三ヶ日産ウンシュウミカンの ‘青島温州’ や ‘興津・宮川早生’ を対象に,高水溶性成分をキャピラリー電気泳動-質量分析法によるメタボローム解析を用いて調査し,品種,グレード,処理方法ごとの総測定データも蓄積させた.この分析では,対象とした151の成分のうち,早生ではメチオニン,グリシン,アスパラギン酸が,青島ではオルニチン,プトレシン,シネフリン,グルタミンが,青島の果汁ではピログルタミン酸,GABA(γ-アミノ酪酸),マロン酸が,有意に多く検出された.さらに,生果と加工品,および加工前後での比較結果を統合し,含有成分量の変化に寄与すると推測される要因も整理した.これらの解析は,三ヶ日産ウンシュウミカンに含まれる高水溶性成分の基礎データとして,今後,代謝や加工による成分変化のさらなる検証につながることが期待される.また,本研究において,クエン酸やGABAなどの機能性表示登録がすでにある成分に加えて,機能性が示唆される成分も検出された.農産物の新規機能性成分表示の検討等においてもメタボローム解析は有用であることを強く示していると言える.
著者
小杉 智 上原 宏 神成 淳司
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J103-B, no.1, pp.1-10, 2020-01-01

本論文では,土壌,農地,気象など農業関連のデータをクラウドデータベースに集約した農業データプラットホーム'農業データ連携基盤(WAGRI)'のサービス,及びアーキテクチャを述べる.耕作放棄地の増大,担い手不足に直面する日本の農業では,農家の経験を代替するデータ農業への期待が高まっているが,始まって間もないこれらの取組みにおいて,サービス要件は極めて流動的である.こうした背景から農業データ連携基盤では,今後発生する様々なデータサービス要件に対して,ソフトウェアの追加開発を極力抑えてサービス実装できるアーキテクチャ'Dynamic API'を考案した.Dynamic APIによれば,ユーザ自身が新たなサービスを実装することも可能である.本論文では,Dynamic APIアーキテクチャによって実現した各種のデータサービスを述べるとともに,このアーキテクチャが新たに発生するサービス要件に対してプログラム開発を伴わずにサービスを提供する仕組みについて,事例を交えて述べる.
著者
神成 淳司
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第21回全国大会(2007)
巻号頁・発行日
pp.2E59, 2007 (Released:2018-07-29)

日本の食料自給率は先進国内で最悪のレベルであり,今後,政府の支援が限定されることにより更なる悪化が予想される.この状況は,熟練した農業生産者以外には高い生産性を得ることができない国内農業の収益性の悪さが生み出すものである.海外事例を参考に,収益性に関する課題克服等を主目的とした,農業分野におけるAI研究の適用可能性について論じる.