著者
菅原 清康
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.79-85, 1978-08-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
17
被引用文献数
1

1) 本研究は比較的古い火山灰黒ボク土壌地帯で, 原野を開墾した畑地に対し耕うんや土壌改良資材の投入によって熟畑化する過程で生起する土壌の化学的性質の変化と, これに伴う雑草植生変化との関係を究明しようとしたものである。2) 土壌改良資材を全く使用しない無施用区では, 土壌の化学的性質は15年後も開墾当初とさほど変らず, 開墾5年後ごろまで草種数が多少増加したが, 以後は変らず, 草種は山野草が主体をなした。3) 少量混用区では, 開墾2年後ごろまで山野草, 以後は山野草と畑地雑草の混生が続き, 草種数は10年後まで, また個体数および草重は8年後まで増加した。4) 多量混用区では, 開墾1年後は山野草, 2~6年後は山野草と畑地雑草の混生, 以後は畑地雑草に転換し, 草種数, 個体数, ならびに草重はそれぞれ少→多→中といった傾向を示した。5) 3試験区を通じ全般的にみると, 熟畑化過程における雑草植生の変遷は, 山野草主体→山野草+畑地雑草→畑地雑草の経過をたどり, これは原野状態の雑草植生→未熟畑状態の雑草植生→熟畑状態の雑草植生とみることができる。6) 山野草の雑草植生から未熟畑状態の雑草植生に転換する土壌の化学的性質の段階は, おおむね土壌pH (KCl) 4.40, 置換酸度 (y1) 10.0, ならびに石灰飽和度20%, また熟畑状態の植生にはそれぞれ5.00, 1.0, ならび50%を境点として転換するようである。7) 雑草植生を転換させうる土壌の化学的性質の境点が究明されれば, これを指標として利用することができ, 営農上極めて有利である。
著者
菅原 清康
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.16, pp.53-57, 1973-09-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
13

(1) 本研究は, 個々の雑草草種が原野, 新開墾畑, 未熟畑ならびに熟畑に単一群落を形成している位置の土壌pH値を群落の規模別に測定し, その草種が生育するための土壌の最適pH値の段階や範囲を究明しようとしたものである。(2) 同一草種では, 単一群落形成の規模の大小によって, 適応pH値の段階や範囲にさほど相異がみとめられない。(3) 個々の草種では適応pH値の段階に著しい相異があるとともに, その範囲にも広狭の相異がある。(4) 土壌のpH値が低く比較的適応範囲の狭い草種は原野に, 土壌のpH値が高く比較的適応範囲の狭い草種は熟畑に, また適応範囲の広い草種は未熟畑に多く発生するようである。また宿根性雑草の多くは, おおむね土壌pH値の適応範囲が広いようである。(5) 土壌pH値の段階や範囲の適, 不適によって個々の草種の発生および消滅が生起し, これらの現象が草種の転換としてあらわれるもののようである。(6) 適応酸度の強弱によって雑草を5段階に分類して1~5の序数をつけ, これを尺度として単位面積当りの平均反応数を出すことが可能である。一方, その場所の土壌酸度を測定し, 土壌酸度を顧慮して雑草を群落の形で土壌の指標としてあらわすことができる。
著者
菅原 清康
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.23-29, 1975-09-25

1.本研究は,さきに明らかにした酸度の強弱による雑草の分類を基礎として,土壌酸度を顧慮して雑草樽落を数であらわす方式をとるに当って,合理的な採土の時期,深さ,個所数ならびに一検体の反覆測定数を究明しようとしたものである。2.地下5cmの深さから採土し,通年酸度の測定を行なった結果,砂土からなる未熟畑および火山灰黒ボク地帯の原野では,年間の変動幅がきわめて小さい。また,関東ロームの未熟畑,洪積埴土地帯の熟畑,火山灰黒ボク地帯の熟畑,未熟畑では,耕起直後と8月が著しく酸度が弱まる。したがって,雑草植生と土壌酸度との関係を調査するに当って,前者はとくに調査時期を考慮する必要はないが,後者の畑地では,8月の調査をなるべく回避した方が無難であるようである。3.火山灰黒ボクおよび洪積埴土両地帯の原野では,深度にとも在って酸度は弱まるが,その程度はきわめてわずかである。また,両土壌地帯の熟畑,未熟畑とも大型機利用ではおおむね地下25〜30cm,小型機利用では15〜20cm程度までの酸度の相異は小さいが,それ以下の深さでは強酸性を示す。これらの事実から,採土は作業能率などを考慮し,深度5cmから行たって何ら差支えがないものとみられる。4.1プロット4m^2程度の比較的小面積の規模では,採土地点を5カ所として一検体を調整し,また,一検体の酸度測定を5反覆程度として,その平均値を求めればよいようである。5.本研究の酸度測定の結果,畑地における雑草の植生は,おおむね地下20〜30cm間までの土壌の酸度の強張によって決定されるもののようである。