著者
福沢 愛 繁桝 江里 菅原 育子
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.327-336, 2021-01-20 (Released:2022-01-20)
参考文献数
21
被引用文献数
2

文化的自己観と幸福感との関連を年代別に検討するため,第6回世界価値観調査の20〜80歳の日本人データを分析した.欧米における先行研究では,文化的自己観のうち相互独立性と幸福感の正の関連が示されているが,相互協調性が優位な日本では,この結果が再現されない可能性がある.若年層ほど文化的規範の影響を受けやすいとされているため,相互独立性と幸福感の関連は,年齢が高い日本人でのみみられると予測した.重回帰分析の結果,中年後期以上でのみ,相互独立性_個の主張が幸福感と正の関連をもっていた.健康状態や世帯収入は年代とともに下がる反面,相互独立性は高年代集団で高い傾向もみられた.高齢期に相互独立性_個の主張を高くもつことが,幸福感を維持するために重要である可能性が示唆された.