著者
菅野 敬 阿部 祐子 奥田 一雄 高橋 正征
出版者
海洋深層水利用学会
雑誌
海洋深層水研究 (ISSN:13458477)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.3-13, 2008-07-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
14

海洋深層水 (以下, 深層水) の清浄性の評価の一部として, 懸濁物質の量と質に着目し高知県海洋深層水研究所で取水している深度320mの深層水と深度5mの表層水について, 2005年7月から月1回の調査を16ヶ月実施した.本研究では孔径0.45μm HAミリポア濾紙に捕集された懸濁物質を主対象とした.同一時期の採取試料の懸濁物質量は常に深層水で表層水よりも少なく平均では表層水の14%以下で, 深層水と表層水ともに懸濁物質量の季節的な変動は確認できなかった.深層水の懸濁物質量の変動範囲は0.195~0.993mg/L (平均0.550mg/L) と1mg/L以下であった.濾紙に捕集した懸濁物質粒子の走査型電子顕微鏡観察により, 深層水の粒子は表層水に比べ小型であるが有機物集塊並びに有機物由来と思われる膜状物や完全なプランクトン藻類細胞は極めて少なかった.しかし深層水の懸濁物質から表層水の4%以下の微量のクロロフィルaが検出されプランクトン藻類のシードストック存在の可能性が示唆された.