著者
二村 和視 岡本 一利 高瀬 進
出版者
海洋深層水利用学会
雑誌
海洋深層水研究 (ISSN:13458477)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.31-35, 2005-12-22 (Released:2010-06-28)
参考文献数
14
被引用文献数
2

駿河湾深層水がサガラメEisenia arborea Areschoug配偶体の生長・成熟に及ぼす影響を調べた.雄性および雌性配偶体の8日間の体細胞平均増加率は, 表層水区で139, 93%, 397m深層水区で200, 175%, 687m深層水区で245, 247%, 鉄無添加Provasoli栄養塩補強海水 (以下PES) 区で266, 213%であった.その後, それぞれの培地に鉄を添加したものに交換し, さらに21日間培養を行った.試験終了時の雌性配偶体の成熟率は, 表層水区, 397m深層水区, 687m深層水区, PES区で, 30, 50, 80, 100%であった.以上から, 駿河湾深層水はサガラメ配偶体の生長および成熟に適していた.
著者
野田 浩之 岡本 一利 岡田 裕史 高木 毅
出版者
海洋深層水利用学会
雑誌
海洋深層水研究 (ISSN:13458477)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-11, 2010 (Released:2011-11-15)
参考文献数
19

淡水で養成されたニジマス (体重93±38g) を, 2006年11月から駿河湾の水深687mから取水し15℃に加温した深層水 (以下, 深層水A区) で52尾, 水温無調整の表層海水 (12~16℃, 以下, 表層海水区) で51尾飼育した. 2007年4月までの日間成長率と生残率は両区で同様な値を示した. 2007年6月から, 深層水A区生残魚10尾 (体重671±541g) と, 淡水で養成後3ケ月間無加温 (7℃) の深層水で飼育したニジマス10尾 (体重337±87g, 以下, 深層水B区) を水温15℃の深層水で, 表層海水区生残魚6尾 (体重883±520g) を水温無調整の表層海水でそれぞれ飼育した. 表層海水区は7月下旬までに全て死亡した. 深層水A区とB区は2007年11月の体重が1.96±0.95kg, 1.29±0.75kgとなり, 成熟率は71%と29%であった. さらに深層水B区では2008年4月に体重3.42kgに成長した未成熟個体があった. これにより深層水をニジマスの適水温に加温することによって大型魚の生産が可能なことが確かめられた.
著者
高橋 正征 池谷 透
出版者
海洋深層水利用学会
雑誌
海洋深層水研究 (ISSN:13458477)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.91-100, 2002-12-20 (Released:2010-06-28)
参考文献数
25
被引用文献数
5

海洋深層水の3大特性の一つである清浄性に関して, 内外の知見の整理を試みた. ここでは, 清浄性を1) 一般生物, 2) 病原・汚染生物, 3) 汚染化学物質, 4) 懸濁物質, 5) 有機物, 6) 重金属類, 7) 放射性物質の7項目に分けて検討した. 各項目では, 海洋深層水のもっている特性を整理し, 深層水を利活用する際の効果について例をあげた. さらに, 深層水を保存する際の清浄性の変化についても取り上げた.
著者
太田 裕紀子 植松 季栄 井上 紳太郎
出版者
海洋深層水利用学会
雑誌
海洋深層水研究 (ISSN:13458477)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.15-19, 2002-04-20 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12

海洋深層水はミネラル成分が豊富に含まれていることが知られているが, 皮膚に及ぼす作用にっいては詳しく調べられていない. 皮膚表層の健全な角層の形成にはミネラル成分が関与していると考えられているので, 今回, 富山海洋深層水の表皮細胞へ及ぼす作用を検討した. その結果, 本深層水は細胞増殖および角化不溶性膜形成を用量依存的に促進し, また角層形成 (角化) に重要なタンパク質であるインボルクリン産生の促進傾向を示したことから, 細胞角化を増強することが明らかとなった. 本深層水に高濃度に含有されるケイ酸は, 濃度依存的に角化を促進し, その効果は共存するカルシウムによって相乗的に上昇した. これらの結果, 本深層水の作用メカニズムの一つは同時に含有されるケイ酸とカルシウムの効果であることが示唆された. 富山海洋深層水は表皮細胞の増殖能と角化能を同時増強することで, バランス良い角層の形成を促し (ターンオーバーの活性化), スキンケアに有用と考えられる.
著者
菅野 敬 阿部 祐子 奥田 一雄 高橋 正征
出版者
海洋深層水利用学会
雑誌
海洋深層水研究 (ISSN:13458477)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.3-13, 2008-07-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
14

海洋深層水 (以下, 深層水) の清浄性の評価の一部として, 懸濁物質の量と質に着目し高知県海洋深層水研究所で取水している深度320mの深層水と深度5mの表層水について, 2005年7月から月1回の調査を16ヶ月実施した.本研究では孔径0.45μm HAミリポア濾紙に捕集された懸濁物質を主対象とした.同一時期の採取試料の懸濁物質量は常に深層水で表層水よりも少なく平均では表層水の14%以下で, 深層水と表層水ともに懸濁物質量の季節的な変動は確認できなかった.深層水の懸濁物質量の変動範囲は0.195~0.993mg/L (平均0.550mg/L) と1mg/L以下であった.濾紙に捕集した懸濁物質粒子の走査型電子顕微鏡観察により, 深層水の粒子は表層水に比べ小型であるが有機物集塊並びに有機物由来と思われる膜状物や完全なプランクトン藻類細胞は極めて少なかった.しかし深層水の懸濁物質から表層水の4%以下の微量のクロロフィルaが検出されプランクトン藻類のシードストック存在の可能性が示唆された.
著者
三森 智裕 中島 敏光
出版者
海洋深層水利用学会
雑誌
海洋深層水研究 (ISSN:13458477)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.23-27, 2001-07-20 (Released:2010-06-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1

近年海洋深層水は水産業, 冷房などの冷熱利用, また淡水などの製品開発に利用されている.汲み上げられた深層水を無駄なく使い切ると言う観点からも, また深層水利用施設の低コスト化という観点からも, 深層水の多段利用システムは重要である.本研究では多段利用システムの構築の際に必要であると思われる, 深層水利用システムの持っ熱エネルギーと栄養塩の供給能力を, 高知県, 富山県, 沖縄県の施設をモデルとして算出した.