- 著者
-
菊地 康人
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 國語學 (ISSN:04913337)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.1, pp.46-60, 155-156, 2000-06-30
ヨウダ・ラシイを中心に,標記各語の互いに類似する用法について,比較検討する。ヨウダは<対象を直接観察し,観察に密着した一体のものとして様子を述べる>場合に,ラシイは<観察に推論を加えて,または伝聞に基づいて,判断内容を述べる>場合に使う。<観察対象と判断内容の距離>が近いと捉えればヨウダ,遠いと捉えればラシイが使われるといってもよい。「観察に密着して様子が見てとれる」とも,「観察に推論を加えた結果そう判断される」とも捉えられる場合は,ヨウダもラシイも使える。なお,伝聞用法のラシイとソウダの違いは,前者が<信じるに足る>という判断を加えて採用するプロセスを含むのに対し,後者は<そのまま伝える>点にある。様態のソウダは<現実とは区別して捉えられた`可能世界'を思い描いて述べる(また,現実がそのように思い描かせるような性質をそなえている)>場合に,ダロウは<見当をつけて述べる>場合に使う。