著者
安田 八十五 菊地 直人
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然・人間・社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.44, pp.21-36, 2008-01

日本ではゴミ(廃棄物)を衛生的に処理する手段として焼却処理が広く普及してきたが、近年焼却処理の際に発生するダイオキシンが問題となっている。ダイオキシンの発生源の約8割が一般廃棄物の焼却施設とされており、排出を削減することが緊急の課題となっている。厚生省(当時・現在は環境省)は小型の焼却施設を大型の焼却施設に集約するごみ処理広域化計画を進めているが、広域化には様々な問題点があり見直しを始めている。特に、まとまったゴミの集まらない人口低密度地域では広域化に伴う弊害が多い。本研究ではこれら人口低密度地域において環境や経済性の面からその地域特性に応じたごみ処理システムを明らかにすることを目的とする。ことに、廃棄物固形燃料(Refuse Derived Fuels:RDF)化政策を導入した政策代替案を提案し、その総合評価を行う。本研究では研究対象地域を茨城県北西部地域の15市町村とし一般廃棄物処理のうち、可燃ごみの収集から中間処理、最終処分までを分析範囲とした。まず、15市町村の現状分析を行いその結果をもとに可燃ごみの収集、中間処理、最終処分の各段階で政策代替案を設定した。政策代替案では全ての中間処理施設を厚生省の定める最も厳しいダイオキシン排出規制値を達成できるものとした。政策代替案ごとに財務分析、LCA分析、社会的費用便益分析を行った。茨城県北西部地域では財務分析の結果から広域化処理の方が自治体の費用負担が少なくなることがわかった。LCA分析によると可燃ごみの収集運搬時よりも中間処理段階の方が電力や燃料消費量が遙かに多くなるため、広域化処理で焼却場を1箇所に集約した方が環境負荷量は少なくなった。しかし社会的費用便益分析では広域化を行わず現在の焼却施設の改造、更新を行った方が社会全体として費用負担が少なくなることが明らかとなった。ごみ処理広域化を行う場合は、焼却施設を統合する市町村、広域処理事務組合間で現在の焼却施設の更新時期が重なれば社会的費用が少なくなる。しかしながら、焼却施設の更新時期が重ならない地域は減価償却が終わった焼却施設においてはガス化溶融炉に更新し、終わっていない焼却施設については排ガス処理施設を設置して対応するのが最も望ましいと言える。本研究ではプラスチック類の分別は想定しなかったが、ダイオキシンの発生源となる塩化ビニール系のプラスチック類を分別しマテリアルリサイクルすることでダイオキシンが抑制でき、ダイオキシンを抑制するために莫大なプラント建設費が不要となる上、無理な広域化をする必要もなくなることから将来の選択肢として検討の余地があるといえる。