著者
菊嶌 孝太郎
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、ケイ素化合物および触媒量のフッ化物塩を組み合わせることにより、ポリフルオロ化合物の脱フッ素水素化反応および脱フッ素置換反応が進行することを明らかにしてきた。触媒量のフッ化物塩およびヒドロシランを用いたポリフルオロアレーンの脱フッ素水素化反応について反応機構に関する検討を行った。金属カリウムとジヒドロジフェニルシランおよびクラウンエーテルとの反応を行い、脱フッ素水素化反応の鍵中間体であると考えられるジヒドロシリケートを合成した。オクタフルオロトルエンとの量論反応を行ったところ、脱フッ素水素化反応が速やかに進行した。この結果は、脱フッ素水素化反応がヒドロシリケートを経由して進行していることを示すものであると考えている。また計算化学を駆使し、本反応がジヒドロシリケートまたはヒドロフルオロシリケートのいずれのシリケートも反応に関与しうることを明らかにした。さらに、典型的な芳香族求核置換反応にみられる二段階の反応(SNAr)ではなく、求核置換反応が協奏的に進行する協奏的芳香族求核置換反応(Concerted SNAr)を経て進行することが分かった。酸フルオリドに対し、触媒量のTBAT存在下、エチニルシランやチエニルシラン誘導体を作用させたところ、フッ素が脱離してエチニル基またはチエニル基が導入されたケトンが得られることが分かった。これらの反応では、フッ化物イオンがシリル基に攻撃することで5配位シリケートとなり、エチニル基やチエニル基から酸フルオリドへの求核攻撃と続くフッ素原子の脱離によって生成物を与えていると考えられる。以上にように、ポリフルオロアレーンの脱フッ素水素化反応における反応機構の解明と、酸フルオリドを出発物質に用いた炭素―炭素結合形成反応の開発を行った。
著者
菊嶌 孝太郎
出版者
社団法人 有機合成化学協会
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.76-77, 2015 (Released:2015-02-20)
参考文献数
13

In 2009, Buchwald group demonstrated the first catalytic nucleophilic fluorination to aryl fluorides in the presence of Pd-catalyst based on tBuBrettPhos with CsF as a fluoride source. Based on the significant report, the palladium-catalyzed nucleophilic fluorination system has been modified to improve the reactivity. Additionally, some groups reported the Cu-mediated and -catalyzed nucleophilic fluorination, wherein the reactions are considered to involve the formation of Cu(III) intermediates.