著者
島田 貴仁 雨宮 護 菊池 城治
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.35, pp.132-148, 2010-10-01
被引用文献数
2

近年,日本では,近隣での防犯対策が広く行われるようになったが,これらの防犯対策が一般市民の犯罪の知覚へどう影響しているかの実証研究は少ない.本研究では,近隣での防犯対策として青色防犯パトロールと犯罪発生マップ掲示を実施している首都圏の1市で住民調査(回答数1,171名)を実施し,防犯対策の認知が犯罪の知覚に与える影響を階層的重回帰分析で分析した.犯罪の知覚を個人-地区,認知-感情の2軸からなると考え,個人の被害リスク認知と犯罪不安,地区の治安評価と満足感の4つを目的変数とした.各目的変数を回答者のデモグラフィックなど統制変数のみで説明するモデルと,統制変数に防犯対策の認知を加えて説明するモデルとを比較したところ,防犯対策の認知は被害リスク認知,地区の満足感に対して有意な影響を与えていた.青色防犯パトロールは,パトロール車両を見た回答者の被害リスク認知を高める一方,地区の満足感を低めていた.一方,犯罪発生マップの掲示は,その内容を確認した回答者の地区の満足感に影響していたが,被害リスク認知や犯罪不安には影響していなかった.近隣での防犯対策の選択への含意が議論された.
著者
菊池 城治 雨宮 護 島田 貴仁 齊藤 知範 原田 豊
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.151-163, 2009-10-20

警察や一般市民の間で,声かけなどのいわゆる不審者遭遇情報は,より重篤な性犯罪などの前兆事案として捉えられているものの,実証的な研究はこれまでなされてきていない.本研究では,犯罪学における近接反復被害の分析手法を応用し,声かけなどの不審者遭遇情報とその後の性犯罪発生との時空間的近接性を検証する.A都道府県警察における3年間の不審者遭遇情報(1,396件)と屋外での性犯罪(599件)の認知データを地理情報システム(GIS)とシミュレーション手法を用いて時空間的に解析したところ,声かけなどの不審者遭遇情報と性犯罪は時間的にも空間的にも近接して発生していることが分かった.具体的には,声かけなどの不審者遭遇情報発生後,少なくとも1ヶ月にわたって発生地点から1kmの範囲において性犯罪の発生件数が有意に高いことが示された.この結果に基づいて,本研究の限界を踏まえつつ,実証データに基づく警察活動への考察を行う.
著者
菊池 城治 雨宮 護 島田 貴仁 齊藤 知範 原田 豊
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.151-163, 2009-10-20 (Released:2017-03-30)

警察や一般市民の間で,声かけなどのいわゆる不審者遭遇情報は,より重篤な性犯罪などの前兆事案として捉えられているものの,実証的な研究はこれまでなされてきていない.本研究では,犯罪学における近接反復被害の分析手法を応用し,声かけなどの不審者遭遇情報とその後の性犯罪発生との時空間的近接性を検証する.A都道府県警察における3年間の不審者遭遇情報(1,396件)と屋外での性犯罪(599件)の認知データを地理情報システム(GIS)とシミュレーション手法を用いて時空間的に解析したところ,声かけなどの不審者遭遇情報と性犯罪は時間的にも空間的にも近接して発生していることが分かった.具体的には,声かけなどの不審者遭遇情報発生後,少なくとも1ヶ月にわたって発生地点から1kmの範囲において性犯罪の発生件数が有意に高いことが示された.この結果に基づいて,本研究の限界を踏まえつつ,実証データに基づく警察活動への考察を行う.