著者
菊池 麻実子
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.459-464, 2022 (Released:2022-09-03)
参考文献数
20

皮脂中の脂質過酸化やそれに続く角層タンパク質のカルボニル化といった皮膚表面での酸化ストレスは,皮膚の性状や外観に影響を及ぼすため,化粧品科学の分野において,長年,重要な課題とされてきた。皮脂は毛穴を通って角層表面に広がっていくため,皮脂中の脂質過酸化状態を考えるにあたって,毛穴の中の酸化反応を無視することはできない。そこで,皮膚表面での酸化ストレスを制御するためには,皮脂,角層,毛穴および毛穴に詰まっている角栓を合わせて,一連の酸化ストレスの対象物として理解する必要がある。本稿では,角栓が酸化ストレスへ与える影響,および角栓洗浄による酸化ストレス低減を介した皮膚外観への効果について紹介する。
著者
菊池 麻実子 五十嵐 崇訓 佐藤 平行 藤村 努
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3+, pp.114-117, 2017-05-01 (Released:2017-10-07)

医療や化粧品分野においては,色素沈着や炎症等の状態評価が求められる.この評価では,メラニンやヘモグロビンを主とする皮膚内色素の定量化が不可欠である.色素の定量化法として,少数の波長における皮膚の分光吸収率を用いてメラニン・ヘモグロビン量にそれぞれ相関するインデックス値(“メラニンインデックス”,“紅斑インデックス”)を算出する手法がすでに提案され,本手法をベースとした機器が開発されるなど,広く利用されている.しかし,本手法には,メラニンインデックス値にデオキシヘモグロビンの吸収に由来する影響が含まれるなど,定量化精度における課題が指摘されてきた.本研究では,この課題を解決するため,メラニンとヘモグロビンの分離精度を向上した新たな算出式を考案した.また,色素状態の理解において,色素の空間分布を把握することが重要であるため,スペクトルカメラを用いて皮膚の分光データを空間分布として取得し,メラニンインデックスと紅斑インデックスの画像化を試みた.これにより,インデックス算出式について画像を用いた検証実験が可能となり,メラニン・紅斑インデックスの空間分布を精度よく可視化できる技術を確立した.