著者
華岡 眞幸 華岡 千佳子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.87-99, 2017-06-30 (Released:2017-07-25)
参考文献数
44

ブラキシズムの関与した限局型慢性歯周炎患者に対し,tooth contact habit(TCH)のコントロールとナイトガード装着後にfull mouth disinfection(FMD)と歯周組織再生療法を行い,サーポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)移行後も良好に経過している一症例を報告する。患者は初診時64歳女性で右上臼歯部歯肉の腫脹・疼痛を主訴に来院した。臨床診査で上下左右臼歯部に限局した深い歯周ポケットと垂直性骨吸収像が認められTCHとブラキシズムの自覚があり,ナイトガードの装着と自己暗示療法の指導を行った。細菌検査でPorphyromonas gingivalisが16.67%,Tannerella forsythensisが3.48%,Treponema denticolaが3.68%と高い割合で検出されたため,アジスロマイシン投与下でfull mouth disinfection(FMD)を行い,その後1,2壁性骨欠損とLindhe下顎II度根分岐部病変にエナメルマトリックスデリバティブ,β-リン酸三カルシウム,吸収性メンブレンを併用した歯周組織再生療法を行った。FMD後は急性歯周膿瘍が再発せずコンプライアンスが得られた。歯周組織再生療法時の所見では肉芽組織や根面の歯肉縁下歯石量は少なく,そのため術野の確保が容易となり施術時間が短縮された。術後の診査では,probing pocket depth,bleeding on probing,clinical attachment levelの減少,垂直性骨吸収像の改善と根分岐部に硬組織の造成が認められた。P. gingivalis,T. forsythensis,T. denticolaは検出限界以下となり,SPT移行後の経過も良好である。