- 著者
-
脇田 健一
萩原 なつ子
- 出版者
- 岩手県立大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2001
本研究では、日本の環境問題や環境運動における女性の「不可視化」(invisibility)と「周辺化」(marginalization)の問題について検討をおこなった。1.「不可視化」と「周辺化」(marginalization)の概念の検討を行なった。2.この「不可視化」と「概念化」の概念を、近年の海外のエコフェミニズムの潮流、特に、マリア・ミース(Maria Mies)、C.V.ヴェールホフ(Claudia von Werlhof)、V.B=トムゼン(Veronika Bennholdt-Thomsen)らが世界システム論に影響を受けながらつくりあげたエコフェミニズムの思想との比較で検討した。そのさい、特に、彼女たちのサブシステンス概念(subsistence)に注目した。3.ミースらのサブシステンス概念をもとに、具体的な事例をもとに検討した。その事例とは、沖縄県石垣市において計画された新空港建設に対する反対運動である。この反対運動では、サンゴ礁の海を埋め立てて新空港をつくることが問題にされた。その分析では、女性の「不可視化」や「周辺化」が、この事例においても問題になっていたことを明らかにした。同じ事例をあつかったこれまでの男性研究者による環境社会学的研究においては、地元の「不可視化」や「周辺化」は明らかにされてきたが、この女性の「不可視化」や「周辺化」は問題にされてこなかった。ここには、ジェンダー・バイアスが存在していたと考えられる。4.エコフェミニズムと、日本の環境社会学におけるコモンズ論とを比較しながら理論的な比較検討をおこなった。特に、エコフェミニズムのサブシステンス概念を媒介して、コモンズ論との接点をみいだした。5.調査の過程で存在が明らかなった、土呂久鉱毒事件に関係する資料の整理をおこなった。