著者
平澤 一 大橋 佳子 萩原 佐地子
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.39-46, 1982-02-27

吃音が聞き手にどのように受け取られどのような扱いを受けるかを知ることは、吃音問題への洞察を深めることにもなり、臨床的意義は大きい。われわれはまず「吃」という言葉が古くは何を意味したかを知るために、インド、中国、および明治以前の日本の古文献を渉猟し、吃音に関する記述を検索した。盲や聾唖にくらべるとその資料は極めて乏しく、いずれも吃音の外面的特徴だけに目が向けられていて、吃音に対する深い理解や洞察に欠けている。ついで、金鶴泳の作品集から吃音の体験記を引用し、吃音に対する聞き手の反応や態度について考察した。この文献例をとおして確実に言えることは、聞き手の吃音に対する無知、無理解、否定的態度が吃音者の社会への適応を一層困難にし、生き方に決定的な影響を与えているということである。