- 著者
-
大橋 佳子
- 出版者
- The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
- 雑誌
- 音声言語医学 (ISSN:00302813)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.3, pp.209-223, 1984-07-25 (Released:2010-06-22)
- 参考文献数
- 65
- 被引用文献数
-
3
3
本研究は吃音に対する明確な自覚, 問題意識, 恐れ, 回避行動をいまだ発達させていないと目された29名の吃音児の自由会語における吃音の頻度と一貫性を測定し, 一貫性が有意に高かった語頭音の音声学的特徴を分析し, 吃音の発生機序について検討したものである.結果は次のとおりである. (1) 吃音頻度の個人差は大きかったが, 吃音の97~98%は語頭に生起した. (2) 吃音頻度が20%を超えると, 吃音の一貫性をもつ音素の数は増加し, その指数も高くなった. (3) 全般的に一貫性が有意に高かった音素は/n/, /k/, /t/, /h/, /m/, /b/, /a/, /o/, /i/, であった. (4) このうち子音音素に共通な特徴は〔-軋音性〕と/h/を除く〔-継続性〕である.以上から, 吃音反応は声道の形状, 呼気の使用法, 口腔内圧等の諸条件と関連して特定の音に生じやすいことが判明した.ゆえに, 吃音の一貫性は必ずしも従来考えられてきたような学習要因による現象とはいえないという結論に到達した.