著者
萩原 恒夫 山浦 道雄 岩田 薫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1989, no.10, pp.1791-1801, 1989
被引用文献数
1 4

アニリン(A),ジフェニルアミン(DPA),N-フェニル-P-フェニレソジアミン(PPD),N,N'-ジフェニル-P-フェニレンジアミン(DPPD),N-イソプロピル-N'-フェニル-P-フェニレンジアミン(PrPPD)およびN,N'-ジフェニルベンジジン(DPBz)を含む各種芳香族アミンの化学酸化重合,重合体の構造および導電性について検討した。2mol・dm<SUP>-3</SUP>塩酸中,ペルオキソニ硫酸アンモニウムを用いて化学酸化重合して得られた重合体は,A,PPD,DPPDおよびPrPPDから得られた重合体(タイプII)と,DPAおよびDPBzから得られた重合体(タイプII)の二つのタイプに分類された。前者は比較的高い電気伝導度(10-1~10<SUP>1</SUP>S/cm)を示し,後者は比較的低い電気伝導度(10-6~10<SUP>-4</SUP>S/cm)を示した。タイプIIの重合体は基本的にアニリン重合体と同じ構造からなっており,タイプIIの重合体はN-Cカップリングに基づくN-フェニルアニリン-N,4-ジイルおよびC-Cカップリングに基づくジフェニルアミン4,4'-ジイルとからなる共重合体であることが元素分析や赤外吸蚊スペクトルからわかった。ESRスペクトルから,AおよびDPPDから得られた重合体中には,それぞれ2.3×10<SUP>20</SUP>個/gおよび1.2×10<SUP>20</SUP>個/gの高いスピン濃度が観測されたのに対して,DPAから得られた重合体中には7.1×10<SUP>19</SUP>個/gのスピンしか観測されなかった。前二者は,後者に比較して,motional narrowingに基づくと推定される4Hの大きな温度依存性が認められた。