著者
左 久 小田 伸一 萩野 顕彦 大谷 昌之
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

泌乳牛へのルーメンバイパス加工デンプン給与が血漿成長ホルモン濃度や乳量・乳成分などに及ぼす影響を検討する4つの実験を行い以下の結果を得た。1.泌乳牛のデンプン利用能を調べるために、泌乳初期牛に40日間、米粉デンプンを日量0.5-1.5kg給与し、乳量および第一胃内容物性状を調べた。デンプン1.0kg以上を摂取した牛の第一胃内プロピオン酸モル比は上昇、pHは低下し、日乳量は減少した。バイパス性デンプン給与日量は1.0kg以下が適切と判断された。2.泌乳初期牛に90日間、バイパスパルミチン酸、リノール酸Caおよび米粉をリノール酸Caで皮膜処理したバイパス性デンプンを1日4,000kcal相当量給与した。日乳量増加は給与熱量からの期待値にほぼ匹敵し、バイパス性デンプン給与が泌乳量をより高めることはなかった。3.泌乳中期牛に180日間、バイパス性デンプンを1日1kg給与すると、開始後約100日間は日乳量が泌乳進行に伴って低下せ、バイパス性デンプン給与が泌乳持続性を高める可能性が示唆された。試験期間中の血漿IGF-1濃度はバイパス性デンプン給与牛111.1ng/mlと材料給与牛が対照牛よりも有意に高く、グルコース濃度は給与前後とも定常値で推移し、NEFA濃度は試験開始より次第に低下し給与2ヶ月後からほぼ一定の値となった。4.泌乳中期牛15頭に60日間、バイパス性デンプンを給与し、血漿GH濃度、GH分泌刺激ペプチド(GHRP)負荷GH分泌反応を検討した。バイパス性デンプン給与牛の第一胃内pHとVFAs濃度は給与前後で変化せず血漿GHの日内平均濃度、GHパルス高、基礎濃度およびパルス数は増加する傾向が認められたが、GHRP負荷反応は対照牛と違いがなかった。これらの試験結果は、泌乳牛へのバイパス性デンプン給与が成長ホルモン分泌を高め、泌乳の持続性を高める可能性があることを示唆している。