- 著者
-
前谷 文美
寺村 誠
山崎 昌仁
大谷 昌之
- 出版者
- 日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
- 雑誌
- 産業動物臨床医学雑誌 (ISSN:1884684X)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.4, pp.191-196, 2015-01-15 (Released:2015-12-02)
- 参考文献数
- 28
二重エネルギーエックス線吸収測定法(Dual-energy X ray absorptiometry;DXA)にてホルスタイン種雌牛(生後1~ 425日)18頭の骨密度を測定した.測定部位は右中足骨とし,機器はDCS-600EXV(日立アロカメディカル,東京)を使用した.血清カルシウム(Ca)濃度,骨形成マーカーである骨型アルカリフォスファターゼ(bone-specific alkaline phosphatase;BAP)値,骨吸収マーカーであるⅠ型コラーゲン架橋N-テロペプチド(type Ⅰcollagen cross-linked N-telopeptide;NTx)値を測定し,骨代謝状況を把握するためにNTxとBAPの比(NTx/BAP)を算出した.日齢と骨密度は強い正の相関関係を示し(r=0.86,p=0.0001),日齢の進行とともに骨密度は増加した.日齢と血清Ca濃度は強い負の相関関係を示し(r=-0.85,p=0.0245),日齢が進むにつれて血清Ca濃度が低下した.NTx/BAP値は血清Ca濃度と負の相関関係を示し(r=-0.61,p=0.0064),日齢とは相関関係がみられなかった(r=0.43,p=0.0743).骨密度とNTx/BAP値は相関関係がみられなかった(r=0.42,p=0.0837).DXA法を用いたホルスタイン種雌牛の骨密度の測定によって,日齢の進行に伴い,骨密度が増加することが判明した.今後,1歳以上のホルスタイン種雌牛を用いた同一個体に対する経時的な骨密度の測定により,成長に伴う骨密度の変化率と分娩前後の骨密度の変化率がデーター化されれば,乳熱などの周産期疾病予防や治療方針の判断につながると考えられる.