著者
薮谷 智規 金澤 隆志 福田 晃規 本仲 純子
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.36-42, 2004-02-01

食塩中の微量元素を迅速かつ多元素同時定量する方法の開発を目的として, 分離濃縮法に塩中マグネシウムを担体とする共沈を用い, 測定法にプラズマ分光法を使用する分析法について実験検討を行った.塩試料を純水約500mlに溶解し, 0.45μmのメンブランフィルターでろ過して不溶成分を除去後, 0.1mol1<SUP>-1</SUP>HNO3溶液とした.本溶液を遠心分離管に秤取後, 沈殿剤として3mol1<SUP>-1</SUP>NaOHを添加し, 沈殿生成後4時間以上放置した.さらに, 2500rpm, 10分間遠心分離を行った後にデカンテーションを含む操作を3回実施し, 沈殿の洗浄を行った.沈殿を濃硝酸で溶解し, 内標準元素を含む溶液を添加した後, 最終溶液量を2mol1<SUP>-1</SUP>HNO<SUB>3</SUB>10mlとなるように純水を加えた試料を測定溶液とした.その溶液を誘導結合プラズマ質量分析法 (ICP-MS) で測定を行った.<BR>Mg共沈時の回収率はAl, Fe, Mn, Co, Ni, Cu, Zn, Cd, REEsについていずれも90%以上であり, その相対標準偏差 (RSD) は3%以内の結果が得られた.また, 塩試料の主要な構成元素であるNa, K, Ca, Srの除去率はほぼ100%であった.本実験における空試験値は測定対象元素において検出限界以下あるいはその付近の濃度であり, 本方法における実験時のコンタミネーションの低さが確認された.実際試料として, 伯方の塩 (伯方塩業製) の分析を行ったところ, μgkg<SUP>-1</SUP>の濃度域であるAl, Fe, Mn, Co, Ni, Cu, Zn, Pbの定量が可能であった.
著者
田丸 素子 薮谷 智規 本仲 純子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1435-1440, 2004 (Released:2005-03-28)
参考文献数
13
被引用文献数
9 13

ホタテ貝中腸腺中金属元素の多元素同時定量法の開発を行った.試料の溶液化はマイクロウェーブ密閉容器を用いる酸分解法で行い,金属元素測定には誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)及び誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)を用いた.分析値の評価にはNIST頒布の標準試料SRM 1566b Oyster tissueを用いた.試料0.5 gを採取し,硝酸,フッ化水素酸,過塩素酸の混酸によるマイクロ波酸分解を行った.分解後の試料をICP-MS及びICP-AESで測定した結果,K,Na,Zn,Mg,Ca,Fe,Al,Cu,Mn,Ba,Sr,Cd,Ni,Co,Pb,Y,希土類元素の定量が可能であった.得られた定量値はPbを除き認証値及び参考値とよく一致した.測定精度はPb,Ni,希土類元素を除きすべて相対標準偏差4% 以内であった.本法を青森産ホタテ貝中腸腺試料の分析に適用したところ,30元素の定量が可能であった.特にカドミウムは中腸腺中に69.0 mg kg-1含まれており,中腸腺中元素濃度と頁岩中元素濃度及び海水中元素濃度の比に基づき算出した生体濃縮係数は他の金属元素と比較して非常に高い結果が得られた.
著者
伊藤 彰英 岩田 浩介 紀 杉 薮谷 智規 木全 千泉 猿渡 英之 原口 紘〓
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.109-117, 1998-02-05
被引用文献数
21 28

誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)及び誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)を, 日本分析化学会より頒布されている河川水標準物質(JAC 0031, JAC 0032)中の微量元素の多元素定量に適用した. ICP-MS及びICP-AESによる多元素分析においては, 河川水試料の直接導入法とともに微量元素に対してキレート樹脂濃縮法を併用することにより, 河川水標準物質中の37元素の定量を行うことができた. Caの12300からTmの0.00012μgl^<-1>まで9けたに及ぶ広い濃度範囲の定量値が得られた. 認証値が求められている元素については, おおむね認証値と一致した結果であった. 又, 希土類元素についても, すべて定量することができ, 頁岩中濃度で規格化した希土パターンでは重希土類元素の相対存在度が高く, Ceの負の異常がある天然水特有のパターンが得られた.